櫂に通信機を借りて、久しぶりにクレイアカデミーにいるミサキと話しをする。
早朝に、櫂のユニットを借りて地上で待機してくれているのにでアイチ自身はユニットを使っていないので疲労はしない。

『クレイアカデミーにもアクアフォースのカードが見つかって、私達はそっちにいけないのに・・アイチ一人で大丈夫?』
エミがアイチ一人で心配だと、不安そうにしているが櫂がいるならとさりげなく言っていたがミサキも櫂だからこそ心配だった。

同じ部屋で夜這いを・・・・・される心配はないだろうが
あのツンデレ、無神経な言葉でアイチを傷つけていないだろうか。

次また、同じことをしたら今度こそ、マジで天高く蹴り上げる予定とか
フォローできるような人は、テツぐらいしかいないからだった。

「平気だよ、でもっ・・ロイヤルパラディンが・・」
『・・・そうよね、暫くの間だけよ。今までいくつもの戦いを一緒に乗り越えてきたんですもの大丈夫よ』
ミサキの言葉で、ゴールドパラディンともうまく付き合えそうだ。
ドラゴンの背中に借りているが、慣れていないから、お尻が痛い。

いつもソウルセイバーの羽で飛行していることが、多いからだろう。

昨日の夜にあった、勝負下着のことをミサキにも話した。
ミサキもエミも似たような可愛いブラをしているのに、いつものに戻せと言われて、愚痴っているとミサキの顔がコワイ。

『・・・・・・なんであいつ、アイチの下着事情知っているの?』
「・・櫂君だから?」
答えになってないし、離れて暮らしていたのに余計に怖い。
実はストーキングしていたんだじゃないかと、ツンデレじゃなくてレン同じヤンデレかと、やっぱりミサキだけでも
宮地に行くべきかと、本気で悩んでいた。




宮地は学業が中心に動いており、まるでショッピングモールのようなレストランがいくつもあり、食堂代わりになっており
今日アイチ達は洋食を選んだのだが、周りの視線が痛い。

「はい、アイチ君。あーーーんvv」
「良いですよ、レンさんっ・・!」
スプーンにオムライスを乗せて、アイチに食べさせようとしているのだ。
席の配置は、櫂の右隣にアイチ、その左にレンが座っているのだが、女子の視線が全て三人に集中している。

「いい加減にしろ、レン」
「いいじゃないですか?櫂にはやってあげませんけどー、自分で寂しく食べてください」
こっちからお断りだと、一人カレーを食べている。
アイチはハンバーク定食で、毎食いつもレンはアイチに食べさせようとして困っているのだ。

「そうですか・・」
食べてくれないですかと、落ち込む子犬のようなレンにアイチは罪悪感が芽生えるがレンは気にせずに
ならばと、デザートのティラミスをスプーンに掬い、アイチに差し出す。

大好物を前に、半分涎を出して目をキラキラさせる。

「はい、あーーんですvv」
レンの言われるがまま、アイチは口を開ける。
その瞬間、櫂の持っていたスプーンがまっぷたつに割れた。

また一つ食器が犠牲となったと遠くの席で一人、とんかつ定食を食べながら調査後は弁償代を請求させると
苦労人繋がりで互いの連絡を好感した三和に報告だと考えていた。





「なー、先導って。あの二人とどんな関係なんだ?」
ナオキと二人、日直の仕事を終えて
廊下を歩いていると皆が一番気になっていることを聞いてきた。

櫂は幼馴染で、レンは櫂繋がりで知り合ったと告げる。

女子達は男のアイチ相手に、嫉妬をするがアイチが唯一あの二人に近づける希望の光であり
表立って虐めると模擬戦みたいなことになりかねないと、追いかけまわされていることは時々あるが
最近は二人のどちらかか、不良っぽいナオキが傍にいると近づいてこない。

(外見負け、しているのかな?)
ナオキは外見だけ?恐くて、櫂と外見も中身も鬼強いがイケメンで
レンは一見好意的そうだが黒い部分が見え隠れしており、それも魅力の一つだと女子には好感だとか。

クレイアカデミーにいた時も、追いかけまわされてミサキに頼んで、厄払いでもしてもらおうと考えていると、人の声がした。

「・・何か、聞こえなかった?」
今日は、システムの関係で午後はおやつの時間辺りまでしか授業がないはず。
残っている生徒は、そんなにいないのにと声のした方をすると眼鏡をかけたアイチと同じクラスの生徒が
数人の生徒に囲まれ、そのうちの一人に胸倉を捕まれている。

ナオキには、昔のアイチがいじめられているように見え、真っ先に駆けつける。

「ナオキ君!!」
近くに先生はいないかとアイチは「誰か―!」と、人を呼ぶ。
彼らのテストでのカンニングを目撃し、先生に報告しようしたがしていた奴らも見られていたことに気付いて脅してきたのだ。

「恥ずかしくないのですか・・国のために命を賭けて戦うヴァンガードにもなろうという人間が」
「綺麗事言ってんじゃねーよ、お前が黙ってれば俺の評価は落ちねえんだよっ!」
鳩尾に一発拳を当てようとすると、ナオキが「やめろ!」と大声を出す。
彼らが振り向くと、肩で息をするナオキがいた。

「なんだ、お前・・学園一の才能持ちで不良が、痛い目みたいのかよ」
小柄な彼を地面に突き飛ばして、倒れる。
そして標的をナオキに絞ってきた、ナオキは構えて喧嘩が始まった。

「卑怯だぞっ、お前ら!!」
一人ならともかく、こんな数人では戦えないと避けつつ、一人一人倒していくしかない。
冷や汗を流し、アイチが先生を呼んでくるか、あのまま逃げてくれていることを願う。

小さなアイチが、標準成長した少年に勝てるはずがないと・・。
前の男に集中していたせいで、後ろを疎かにしていたので、背後から思いっきり殴られる。

そのまま、頬も殴られ、地面に倒れた。
「なんだ?優秀だっていうのは噂だけだったのか」
「ちくしょっ・・・!!」

大きく足を上げ、踏みつけてやろうと歪んだ笑みを浮かべる彼らに、耐えるように雑草を握り締めて、固く目を閉じる。

「ぐはっ!!」
しかし、何者かが男を膝蹴りで吹き飛ばす。
目を開け、顔を上げると上着を脱いだアイチが、集中するように構えて息を吸う、まるでどこかの格闘家のように。

「もう大丈夫だよ、ナオキ君」
「・・・・・アイチ・・先導・・・・・?」

自分の3倍の男を、小さな身体で吹き飛ばさなかったか?
一瞬だから、きっと気のせいでヴァンガードだとユニットを使っているのかと思いきや、素手だった。

「このチビが!」
一斉に飛び掛かってくるが、あの気弱さそうに笑う少年は消え、弱き者を守る騎士がいた。
目は意志の強さを現し、まるで別人のように本当に子供の頃いじめられてばかりでボロボロの少年だったのだろうか。

「たぁっ!!」
同性のナオキでも、やられた相手をアイチはたった一人で互角に、それ以上の力で戦っている。
アイチの動きは何処かで訓練されたような、ただ力を振るう男に簡単に負けない。

「・・・後ろだ・・・アイチ!!」
「!!」
ナオキに言われ、後ろを振り向くがすでに遅い。
羽交い絞めにされて、身動きが取れずもがくが、すぐに頭を切り替え、逆に腕を支えてもらい、アイチの前に来て
殴ろうとした男の急所を思いっきり蹴り飛ばした。

「ミサキさんが、男の急所教えてくれてよかった」
痛そうだし、男全員がやられた男に同情をする。
両足を天高く上げるとアイチは、足の回転させるように羽交い絞めにしていた男を蹴り飛ばす。

「すげぇ・・」
自由になると、華麗に地面に着地。
もう大半の生徒が倒れ、残っているのかリーダー格の男だけだが、追い詰められた男はポケットから小型ナイフを取り出す。

「おい、それはやべぇだろう!!」
仲間の男も、ナオキもやりすぎだと刃物に怯えつつ言うが、頭に血が上った男の耳には入っていない。

「うるせぇっ・・チビのくせに舐めやがって」
「・・・・・・そんなもの、何の役にも立たないですよ」

そのまま、ナイフを捨てる気はない男。
何を考えたのかアイチは走り出す、逃げることもなく・・まっすぐ走り、頬を僅かにかすると右襟元を切った。

「・・・ぐはっ!!」
刃物もアイチは恐れる様子もなく、手刀で刃物から手を離させると地面に音を立てて落ちるナイフ。
全員にアイチは完勝、息をゆっくりと吐くと。

「まだ、やりますか?」
いくつもの戦場を経験してきたようなヴァンガードの目に、男達は仲間を抱えて逃げていく。
完全にいなくなると、いつものアイチに戻った。

「大丈夫ですか?」
「はっ・・・はい・・強いのですね、先導君・・ですよね?」
メガネのフレームを指で上げて、アイチの雄姿に感動したように目が輝いている。
目立った傷もなさそうだと、腹に手を当ててナオキも近づいてきた。

「すげーな、アイチ」
「今、アイチって・・」

ちょっと前まで、『先導』と呼んでいたの。
咄嗟に先導よりも、アイチと呼んだ方が早いと慣れ慣れしく呼んでしまったが。

「僕も『ナオキ君』って呼んでいいかな?」
「おっ・・おうよ。・・お前は?」
メガネのおかっぱ男子に視線を向けると、本の埃を払いながら。

「小茂井シンゴです、むらくものクランを取るために留学してきたのですが・・助かりましたです。
しかし、不良として有名の割に強くないのですね」
「んだとぉ!!」

今度は喧嘩し始めた二人、ナオキも無駄に元気そうだし安心していると
ナオキの口元で切れていたので、アイチは持っていたハンカチで軽く拭いてあげた。

「痛むかな?」
「い・・・いいや・・別に・・痛くなぃけど・・・」
恥ずかしそうに、顔を背ける。
アイチは男のはずなのに、時々仕草が女のように物腰になるのは何故だろうか。

中性的な顔立ちのせいだろうか、ポケットから肌色の絆創膏を取り出して貼ってあげた。
怪我した時のために、持ち歩いていて役に立った。

「お前も、まだ持っているなら俺が貼ってやるよ」
「あっ・・・切られての忘れてた」
頬に触れて、指先に血がついていた。
ヒール系ユニットを使うまでもないだろうと、絆創膏を今度はナオキが貼ってあげる。

「えへへへ」
男数人を一人で相手にした男とは見えないような、照れるように可愛く笑うアイチに、つられてナオキも笑う。

だが、ワイシャツは切られ、頬に傷を負ったことを櫂とレンにどう説明するかと固まる。
絶対に暗殺に行きそうだし、穏便に解決できる策がアイチの脳みそでは練ることができないと

冷や汗が流れるアイチにナオキはというと。

(今頃になって、恐くなったのか?)
櫂とレンの恐ろしさを一部しか知らないナオキは、そう考えていた。
頬の傷は転んだとか言って誤魔化させるが、パックリと切られたワイシャツはなんて説明したらいいか。

「どうしよう・・」
頭を抱えるアイチにシンゴとナオキは顔を合わせて、首を傾げる。












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