生徒会室は、王の執務室同前。

学園外の城に独立した形で、城内部にあるのだが地下には
ごく一部のモノしか知らない国内人入したスパイ達が牢に閉じ込められていた。

「命を奪わぬだけありがたいと思いたまえ」
太陽の光もなく、壁は頑丈な作りの石で囲まれており、男は警備兵を連れて最近捕まった男を連れてくる。

「世界の危機・・・・見知らぬお前達罰が下るぞ!」
「フッ・・・それは楽しみだ」

ただの戯言と、片づけて長く濃いめの紫の髪を揺らしながら帰っていく。






考えた末に、カバンで隠しながら部屋に入り、櫂がいた場合は素早く替えのシャツを持って脱衣所でも着替えればいい。
多少、言動は怪しいがバレる前に破れたシャツを処分すれば。

「た・・ただいま・・」
こっそりと、ドアを開けると櫂は先に帰っていて椅子に座っていた。
「ああ」といつものやり取り、このままダッシュしようとカバンで前を隠して進むアイチに、櫂は目を細める。

「・・床に置いたらどうだ?」
「きょっ・・・今日は持っていたい気分なんだ!」

怪しい、何か隠している。
探るような目に、早く脱衣所に逃げ込めば男の櫂はさすがに入り込めない
乙女の聖域へ櫂から目を離さずに、足だけを一歩一歩ぎこちなく動かす。

逃げ込む前に、椅子から立ち上がった櫂が近づいてきた。

「何かを隠している」
「べっ・・別に何も」
「ならカバンを退かせ」
「そのっ・・・シャツに、ケチャップ零しちゃって」

早く水につけば、汚れは落ちるし、汚れ具合を見たいからカバンを退かせと言い出し、カバンに手をかける。
何の訓練を受けていない男相手なら戦えるが、数回、アイチと櫂の間を行き来した鞄だが
櫂相手の力比べではアイチは完敗だ。

多少足掻いたが、あっさりと力負けし
頬に絆創膏右襟元はバッサリと切られ一気に櫂の周りの温度が冷めていく。

「あっ・・・あのっ・・・これは」
何か理由を脳をフル回転させて、考えるがどんな言い訳を考えても無駄なようだった。






「入るぞ、櫂」
ノックをして、入るとテツは部屋の真ん中でアイチが正座して、その前には切られた制服。
閻魔大王のように仁王立ちする櫂、アイチは顔を上げることもできず、怯えている。

「何があった?」
アイチから、事の詳細を聞いて、確かに目立った行動はしてしまったが二強ほどではないと櫂ほど責めることはなかったし
お人好しのアイチの性格を考える、しょうがいことだと納得するしかない。

それが、レンも救ったのだから。

「別に助けたことを、怒っているんじゃない」
素人相手にアイチがやれるとは考えてないし、いざとなったらゴールドパラディンもあるが
櫂がアイチを問い詰めていたのは。

「それで、相手は?どんな奴だと聞いているんだ。俺が代わりに燃やしといてやる」
黙示録の炎をもってな。

その手には、ドラゴニック・オーバーロードがあり、怒りが極限突破したのか悪い顔で笑っていて
今、アイチが彼らの情報を吐いてしまえば確実に殺されてしまうと、テツもアイチも容易に想像つく。

テツに「火事なんて起こしたら、騒ぎが大きくなる」と説得され、今回のことは櫂は渋々納得してくれた。




同じクラスの友達が、もう一人できた。
小茂井シンゴという名のアイチよりも、背の低い男子だけど情報能力に優れていて、アイチも好評価するほどの実力。
次の日の放課後、突然ナオキに呼び出され、ついでにシンゴもついてきた。

「あのっ・・話って何?」
「なんで刈り上げメガネまでいるんだよ。俺はアイチに用事があってだな・・」
邪魔だと、睨むがシンゴは外見だけの不良のナオキに臆することもなく。

「別にいいじゃないですか、僕に構わず続けてください」
「はぁ・・?」
ノートパソコンを起動して、少し離れたところで何やら作業をし始めたが、破れかぶれだとナオキは気合を入れ。

「アイチ、俺に戦い方を教えてくれ!」
「・・・・えーーーーっ!!あの・・喧嘩が強くなる方法とかちょっと」
丸腰になった時のことを考えて、光定と戦っている間にあんな感じになって
人助けのためと今回は戦ったが櫂の極限突破され、やはり誰かを呼ぶべきだったのではと判断に悩んでいる。

「勿論、ヴァンガードとしてだ!!お前強いんだろう、あいつらと戦っているのを見て俺の感がそう告げているぜ!!」
いじめられないように鍛えたのだろう、外見とは逆に実はナオキよりもアイチは男らしいのでは。
まるで童話に出てくる騎士のようでカッコよかったと、バカ正直なナオキでもさすがに言えないが
教師よりもアイチに強くなる方法を教えてもらいたい。

「フッ・・ようやく本気で勉強する気になりましたか。では僕が初心者様のためにスケジュールを作ってやりました」
「「早っ!!」」
二人はいつの間にかシンゴのパソコンの画面にナオキの一日のスケジュールがグラフ形式を作ったことに驚く。

「ところで、君は何のクラン志望なんですか?
君の乱暴な性格からして、ディメッジョンポリスやペイルムーンは向いていないでしょうね」
クラン一覧をずらっと出され、そういえば未だに何のクランを取得するか
決めていなかったことに今更気付く、アイチは苦笑する。

入学する時に、決めるはずなのに面倒という理由で
ずっと先延ばしにしていたと聞いたら、シンゴに思いっきり馬鹿にされた。

「うーん、じゃ・・ロイヤルパラディンとか。
かげろう・・おおっ、シャドウパラディンとかカッコよさそー!!影の騎士っていいじゃん」
騎士って、単語的にカッコイイとか言い出したが全て三強の持つクラン。
シンゴはともかくナオキは三強のことなど、知らなさそうなのに
野生の感だろうか思わず反応してしまう。

「ロッ・・・・ロイヤルパラディン・・・・!!」
自分の持っているクランに反応してしまう、全てのクランを表にしたと言っても
己の属性にあったものでなければ使いこなせないのだが。

「やはり、君は初心者の中の初心者ですね・・」
「んだと!!」

「いいですか!!かげろうは火力を調節するのが難しいのですよ!!あと、ロイヤルパラディンも同じく!!
そしてシャドウパラディンは禁忌と恐れられたクラン、初心者様が使えるわけないじゃないですか!!
しかも『白青の姫騎士王』様と同じクランを志望だなんて・・身の程知らずがなのですよ!!」

カッと、目を吊り上げに語るシンゴに、ナオキも思わず後ろへ下がる。
でも櫂は火力調節したことないような、常にコンロのメモリは『最大』のような
ふとアイチは、シンゴの言った『白青の姫騎士王』という人物に心当たりがない。

同じロイヤルパラディンのクランを持っているなら、有名のはずなのに。

「『白青の姫騎士王』って・・誰のことで・・」
ガサリと、緑の茂みが動くと櫂とレンとついでにアサカがやってきた。

「アイチ君、探しましたよ。何をしているんですか?」
隣のクラスの有名人と、美人の転校生が揃って登場。
「ああ・・」とナオキは櫂を見たが、櫂は機嫌悪そうにナオキの見えない方へ顔を毛嫌いしていそうな態度を見せる。

(うわっ・・なんだよ。こいつ・・・)
外見、人良さそうなレンに対し、櫂もアサカも明らかに見下しているオーラを発しており
ナオキはまるで、犬が威嚇していそうな唸り声を出しかけた。

「今からヴァンガード最強三強について、先導君と初心者様に説明しようと思いまして」
ピシリッとアイチが固まる、シンゴは想像もしていないだろう。
この場に三強が集まっていることに、アイチの感がシンゴに三強を語らせていないと告げている。

「あのっ・・今度でいいよ」
「いいえ、ようやく語れる方に出会えたのですから言わせてください。
皆、世間に無関心ですから!!『白青の姫騎士王』様、『緋血の闇帝王』『暴凶悪の竜皇帝』について」

(それって・・・まさか)
二つ名だけ聞いて何故だろう、ピッタリと一致する二人の人間を思いついてしまうのは。
一見表面上何もなさそうな二人だが、櫂も恐いが・・レンが一番怖い。

「是非、僕にも聞かせてください。・・・・・・特に『緋血の闇帝王』について」
最後の辺り、まさに闇の帝王という顔で座っているシンゴを見下ろすがパソコン画面に夢中で気付いていない。
うっかり見てしまったナオキは、レンの闇の一面を見て顔が青くし、アイチはもう何も言えずにいた。

「いいですか、今の時代で最強の実力を持つヴァンガードでその中の一人。唯一PSYクオリア持ちではないのですが
その戦闘能力は桁外れに大きく、ただの強いヴァンガードだけなら、数人がかりでも歯が立たないまさに鬼強!!
性格は歪んでいて、集団行動のできない自己中心、超俺様様!!
彼の通った後にはペンペン草どころか生きとし生きるもの死に絶え焼野原と化し

恐れられ、ドラゴンを犬猫のように従える、まさか!!暴凶悪の竜皇帝!!!」

「すげーーー!!カッコイイじゃん!!暴凶悪の竜皇帝」
名前からして、人を寄せつけない恐れられている的な名前がたまらないと興奮するナオキ。
ちらりと櫂を見ると、前髪が目を隠して、どんな顔をしているの伺えないところからして恐い

半分以上当たっているだけに余計にだ。

隣にいるレンが『暴凶悪の竜皇帝』ですってーー・・とか笑いながら言っている、アサカは必死に笑いを堪えている。

しかし、それはレンが第三者ではどう見られているか、聞いた後、真逆と化す。

「次に『緋血の闇帝王』!!こいつは超危険人物です!!
独裁国家AL4連合国の帝王で、世界を支配しようとした暗黒の独裁政治家です!!
紅い髪をしていて、まさしく死神でしょう。彼に立ち向かったヴァンガードの姿は
その後、誰も見たこともないほどと言われ、極悪非道にして、性格は残虐・冷酷・冷徹。

もう・・それは暴凶悪の竜皇帝比ではありせんよ!!

二人とも大層整った顔立ちの男性とか言われていますが、どこまで本当かどうか・・」
絶対に名前負けしているに違いないです、と完全に否定。
アサカは笑顔の仮面を貼りつけしし、後ろに回した手にはナイフがあり、いつでもシンゴに向けて逃げようと構えている

「全ての闇の支配者にして、あらゆる者を屈服させ、それを喜びにする!!歪んだ独裁者の帝王、それが緋血の闇帝王!!」

「おおーー!!なんかダーク的で、すげーじゃん!!」
(もうやめてーーーシンゴ君の命が危ないーーー!!)
興奮しているナオキと、語ることに夢中になっているシンゴだが
アイチは真っ青な顔で後ろにいる『緋血の闇帝王』『暴凶悪の竜皇帝』が、言葉に表せなそうなくらい、静かに怒っている。

明らかに怒り顔してる櫂よりも
「恐いですね・・『緋血の闇帝王』は」とか言って冷え切った顔で笑うのレンの方がコワイ。

なんで此処まで二人の性格を事細かに知っているのに、姿を知らないのが疑問だが
知っていたら潜入できなかっただろうし、アイチの心は複雑だ。

「そして最後に、三強の頂点に立つ!!
その姿はまさに、天から舞い降りた女神天使!!『白青の姫騎士王』様にして光の先導者様!!」
「最強なのに、女かっ!!すげー強いんだろうな!!」

最後にアイチの番、最初の二人で語られたライフ0に近く、自分を悪く言ってくれれば二人の怒りも少しは冷めるだろうと考えた。

「可愛らしい顔に、女性らしい体つきに白と黒の剣を従えた、闇も光も力にするどんなに罪深く者も温かく包む慈愛!!
闇の先導者である、緋血の闇帝王を倒し、許した心の広いお方なのです!!」
「おおっ、まさかに女神って感じだな。強いんだよな・・・三強の中でも」

「当たり前です!!しかし、力には決して溺れず、いつも弱い者の味方です!!
彼女の姿は超トップシークレット級扱いでしたが、いつかお会いしてみたいものですっ・・・!!」

(・・違う、僕はそんな綺麗じゃないし・・強くなんて・・)
興奮しているナオキとシンゴは、アイチが何故か白青の姫騎士王について語った後で落ち込んでいることに首を傾げる。

「どうしました?先導君」
「・・・白青の姫騎士王は、きっと皆が思っているほど綺麗じゃないよ」
新たなクランも使うのを戸惑ってばかりで、櫂とレンに助けてもらってばかりで足を引っ張ってばかりで
三強というのもただの数合わせだと、言うアイチに知らない二人は泣きそうな顔をする理由がわからないでいる。



その様子にレンも櫂も、目を細めて見ていた。
褒められて、尊敬され、シンゴの語るアイチはその通りのはずなのに

喜ぶどころか現実を知り、ショックを受けるのだとネガティブに考えるなんて。













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