『つまり、アイチはその二人と、自分のために武闘大会に参加したと』
「そうなんだけど・・まさか櫂君とレンさんが出場するなんて」

三和に事情を説明すると、二人して大人げない嫉妬で邪魔してやろうという魂胆を見抜いた。
大会主催者に一人人数が不足していると言われたが「俺達は二人で十分だ」とか、脅したらしい。

確かにあの二人で、もう一人のメンバーは必要ないだろうが
アイチというストッパーがいない、二強は超やばい、下手すれば会場が吹っ飛ぶ。

『死人が・・出るんじゃねー・・・』
呆れた顔で、三和はそう呟く。
良くて建物そのものが半壊だと、アイチも自分のことで手がいっぱいだし、対戦相手はとんだとばっちりだ。

「ええっ!!」
どうしようと混乱するアイチ、美形な二人に挟まれて幸せなのか、女性でないのでわからないのが
二強に憧れる女性はアイチの苦労を知っても、間に立ちたいかと疑問だ。

『まぁ・・がんばれ』
アイチはあの二人と戦うことになっても、心配ないが残りのシンゴとナオキは生死については保障できない。






幸いにも、チームクローバーとチームFFは別ブロックで決勝まで当たることはない。
確実に勝ち抜いていくFFに、他のチームも戦力分析するように他のブロックそっちのけで観戦にきている。

「強いって思っていたけど、やっぱしすげーな、お前も友達」
「かげろうと、あと一人はクランを戦闘のたびに入れ替えて・・気分屋なんでしょうか?」
今日はペイルムーンのデッキで戦っていると、女子の一人がレンに黄色の声援を送っていると
アサカが「レン様が戦いに集中できないじゃないの!!」と叱りつけると「すいません、アサカ様」と謝る。

「・・・なんだあれ・・」
ナオキの視線の先に、レン様親衛隊で応援団がスタンドの一部を占領していた。
親衛隊隊長であるアサカは、子供みたいに笑ってアサカに手を振るレンに立ちくらみを覚えて
アサカの後ろにいた女子生徒は次々に、幸せそうな気絶していく。

「すぐに、タンカを!」
同じ親衛隊によって、気絶した女子は保健室へ。

「しっかりなさい、それぐらいで・・・うぅ・・失神しては親衛隊は務まらないわよ」
とか言いつつ、地面に膝をつくアサカは他の隊員に支えられていた。
最近レンを紹介されてと頼まれないはずだと納得、レンのファン達を集め、親衛隊を結成し
抜け駆けしてアイチにレンを紹介させるのを阻止したからだった。

「確かに顔は整っているよな、あいつら・・・」
「うっ・・うん」
戦った全ての対戦は、白星一色。
当然なのだが、やっぱり二人は凄いのだと、チームの中で黒星を作ってしまったアイチは凹んでいた。

油断してしまったとはいえ、これが三強だなんて恥ずかしい。

「気にするなって、俺とシンゴで挽回しただろう!」
「そうですよ、先導君はどっかの初心者様と違って優秀なヴァンガードですし」
「んだと!!」
また喧嘩するが、アイチの深い溜息が聞こえ、シンゴとナオキはアイチを必死に慰めていると
歩いているだけで注目されているチームFFな二人が登場。

「アイチ君ーーと、誰でしたっけ?」
まぁいいやという顔のレン。

「おい!!」
ナオキは名前を覚えられていないことに、怒鳴るがレンは無視。
彼はアイチに近づきと元気のない姿を見て、「この二人に、いじめられたのですか?」とか失礼なこと言われた。

「いえ・・・そんなことは」
「そうですか、お腹が減りましたので一緒に」

「敵と一緒に飯なんて食うか!!行くぞ、アイチ!」
ナオキはアイチの腕を掴んで引きずっていく後ろにはシンゴが続いていく、それには櫂の眉もピクリと動く。
「ごめんなさい」と謝ると、離れていくアイチに、ムッとするレン。


「大会中はあいつらは敵だぞ、いいな!!」
大きめのダブルバーガーを食べながら、シンゴには珍しく良いこと言うじゃないですかと褒められる。
アイチは食欲が湧かず、ポテトをちびちび食べているがそれで次の戦いで倒れてしまうと
甘いものでもいいから、腹にいれてこいとナオキに言われてレジで並んでいると。

「よかった、これどうぞ」
渡されたのは、透明のカップに入ったミニパフェだった。
明るい赤い色に先端が黄色の髪をした、明るい三和にタイプが似た少年。

「でも・・悪いよ」
「いいって、これから迷惑かけることになるだろうし、ごめんね。お姉さん」



「!!」


驚くアイチに、彼は相変わらず笑みを絶やさない。
どうしてアイチの正体を知っている?もしや光の先導者だと知っているのか?

「僕の名前はファジル・アリ、アリでいいよ」
「あっ・・君」
パフェをアイチに押し付けるように渡すと、人ごみの中消えていく。
すぐに追いかけがランチ時で人は多くて、すぐに見失ってしまうが一体何者なのだろうか?

「・・・迷惑って・・・?」
武闘大会に何かあるのかと、ナオキ達に座る席に戻ると
パフェを溶けないうちに急いで口に流し込んで櫂の携帯に連絡をし

先ほどの様子を詳しく教えると、二人はすぐに店に来てくれた。




「怪我とかないですか?」
「はい、でも・・・見失ってしまって・・・」
ただパフェを渡されただけで、それも普通の味していたし、他には何も。
他にも変わった様子はないかとレンと櫂は辺りを観察するが、注目チーム二人の登場に店内がざわついているぐらいだ。

「ファジル・アリ・・・か、一応調べてみよう。本名かどうかわからんがな」
櫂と話をしているとアイチの携帯が再びなり、緊張する。
だがかけてきたのはナオキからで「いつまでトイレに籠っているんだよ。トーナメントが始まるぞ!!」と大声で怒鳴られて
櫂にもレンにも届いていて、外見笑顔でアイチを見送るレン。

「あとは僕らが調べておきます」と言っているが、その笑顔が逆に怖いと感じるのは気のせいだろうか?

お言葉に甘えて、頭を下げて、その場を離れる。




順調に勝ち進んでいたチームクローバーだったが、次に戦うことになった相手にカムイほどの年齢の子供だった。

「おい、ガキかよ!」
よく大会が許したなと、正直な感想を述べるがメガネをかけた黒髪の少年が。

「そんなセリフは、僕らに勝ってから言ってください」
チームジニアスと名乗る彼らと、チームクローバーは対戦することに。
最初は黒髪眼鏡の優等生タイプなリー・シェンロンという少年だった、開始の合図と共にナオキは
サンダーストーム ドラグーンにライドする、ドラゴンの背に乗り、紅い鎧はまるで櫂のようだった。

「いくぜ!!俺様のブレイクタイムだ!」
「・・・だから休憩時間って意味ですから・・」
脱力感でいっぱいな気持ちで、いまだに戦闘時にはブレイクタイムと名前がカッコイイからという理由で
大勢の人間の前で、恥ずかしがる様子もないのは尊敬する。

「勉強し直した方がいいのですは?キャンパスコアラをコール」
可愛らしい動物をモチーフにしたユニットが登場、可愛いもの好きなエミが喜びそうだが強そうではないので
余裕なナオキだったが、戦いに慣れた戦術でナオキを追い詰めていく。

「やりますねっ・・・」
シンゴはナオキにしては頑張ってはいるが、やはり経験値の差が大きい。
次第に追い詰められていくナオキだが、最後まで彼は悪あがきをやめないであろう。

「では、ファイナルターンと行きましょうか?タンク・マウスをコール!」
戦車の上にハツカネズミのような動物がいた。
特に戦車はやべぇっと構えるが持っているカードは太刀打ちできそうにないが

リゾートアイランドで手に入れた、格安だけど扱えないカードにナオキは賭けた。

「こうなったらっ・・・アーマーブレイク・ドラゴンにライド!!」
G3のカードをライドし、ナオキの手には黄色の雷の宿った大きな剣を持つ。
まるで何倍もの重力がナオキに身体を地面に押しつぶそうとする、これがG3なのかと必死に耐えた。

「くっそーーー、くらいやがれーーーー!!」
「!!」
まさか、G3のカードを使える初心者だったとは予想外の展開に頭が整理できない。
タンク・マウスを簡単に吹き飛ばして、へたりと脱力して地面に座り込むリー。

「勝者、チームクローバー、ナオキ・石田・ビギナー!!」
「やった!」
試合が終わり、アイチとシンゴが駆け寄ってきた。
終わったことで一が切れた人形の座り込むが、まだライドは解除されていない。

「大丈夫ですかっ・・・わわっ!」
ナオキの身体に触れようとすると静電気が、邪魔をして今にも倒れそうなナオキの身体を支えられない。
本人も声が届いていないのか、虚ろな目をし、ただ荒く肩で息をするだけ。
触れることもできず、一時会場はざわめいたが、アイチがナオキの横に腰掛けるとゆっくりとした口調で話しかけた。

「ナオキ君、落ち着いて・・・息をゆっくり吸って・・・・それを繰り返すの」
落ち着いた凛とした声で、ナオキに話かけるとアイチの言葉だけと無意識に耳に入ってきたのか
ゆっくりと息を吸い始めるナオキ、そしてアイチが触れた時は静電気に弾かれることはなく

シンゴは「なんでですか?」と驚く。

「もう終わったよ、だから・・君もお疲れ様」
ユニットとナオキに話かけるように、ナオキの頭をアイチの胸に引き寄せるとナオキは目を閉じる。
淡い白い光がナオキの身体から現れると、ライドは解除、そのまま気を失った。

「ナオキ君!」
アイチとシンゴの二人で倒れかけたナオキの身体を支えるが、小柄な二人ではナオキは移動できないであると
審判のテツがリングに上がり、軽々と後ろの引き換え椅子に横にしてくれた。

「力を使い過ぎたことにより、気絶しているだけだ。暫くすれば元に戻るだろう」
「そうですか、ありがとうございます」
ちらりと、テツは反対側にいる対戦相手に目を向けた。

あの感じ、どこかかつてのレンに似ている気がする。
特に明るいクリーム色の緑カエルのパーカーにフードを着た少年は特に強く。

「あっ・・!」
テツが去ったところで、彼らの中にアリがいた。
アイチに気付きと爽やかに笑顔で手を振っている、まさか迷惑というのは、この事だろうか?

「対戦選手は、リングへ上がってください」
「はっ・・はい」
一時、ナオキがカードの力を制御できずにいたが、気を失い、休んだことで流れを取り戻す。
リングにアイチが上がると、テツがレンと同じ感じがすると言っていた少年がいた。

カエルのフードを下すと、ただの普通の何処にでもいる少年のようにも見える。

「お手柔らかに・・・」
「よろしく、先導アイチ。いいや・・・」

唇の動きは確かに『光の先導者』と動いていた。
青い目が見開いて、会場に来ていた櫂らも、声を読み、対戦相手に動きを見逃さぬように観戦に集中する。

「見てなよ。僕は君ごときとは違うよ、リー」
敗北したリーは悔しいそうに、下唇を噛んで悔しがり、それをアリは慰めているかのようだ。
コールしたのは鉛筆騎士はむすけで、これまた紫と白の可愛いネズミだが

アイチのコールしたすれいがると互角に戦っている。

「ライド、大いなる銀狼 ガルモール!!」
水色のマントをなびかせて、黄金騎士の登場にレンから
「わぁー〜カッコイイです」と感想と共に小さな拍手が送られる。

レンの声援と、視線を独占している羨ましいアイチに女子は男子ながら嫉妬するが
アイチに関するレンに関しての一切の接触は、親衛隊条約で禁止されていたが。




「アサカ様、あの子がレン様に慣れ慣れしく纏わるつくのを何故お許しになるのですか?」
どう見てもレンがアイチににべったりだが、女性見ると逆らしい。
納得できないがアサカはアイチに大きな借りがある。

「いいのよ、あの子には借りがあるから」
深い闇の中、アサカすらも救うことができなかった闇の中から、レンを救った。
前は妖しく美しく、冷徹さも魅力の一つだったレンが、今は子供みたいに笑う無邪気な一面もあり
時々「アサカの淹れたコーヒーは好きです」と笑う姿に、何度残酷と恐れられた暗殺者がショック死しそうになったことか。

この笑顔と、コーヒーを淹れても礼も言われることなどなかったのにそれらは全てアイチのおかげだと

認めたくないが、アイチはレンと三強と肩を並べても
恥ずかしくないだろうと決して本人は一生言わないがそう納得していた。







これは余談だが、実は3人目のメンバーにどうして入れてくれなかったのかアサカがレンに聞いたところ。

「最近忙しそうでしたからー、仕事のできる部下を持って僕は幸せですね、これからも頑張ってくださいね」
「あっ・・・ありがたきお言葉、もったいないです・・・」

・・・・実は、親衛隊結成のために忙しかったなどと口が裂けてもいえなかったとか。











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