「行くぜ――!!封印の檻を破って降臨しろ!!雷の化身、ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオンにライド!!」
雷に似た光の後、身体は雷の電流が帯びているような電気が走り
それだけで、飛び掛かろうとしていたユニットを全滅させた。

ゆっくりと、顔を上げるナオキはなるかみのヴァンガードとしてふさわしい表情をし、戦っていた櫂とクリストファーも見た。

「これからが、俺のブレイクタイムだ!!」

ただし、決め台詞については訂正はしないようだ。

ピシッと手には中央が持ち手となり、上下に円すい状の刃がついており、ナオキの声に答えて
白銀の電流を帯びながら、次第に集まると電気の刃と変化。

まるで神話に出てくる神が持つ、武器のようだ。


「よかった、ナオキ君・・」
地上では、瓦礫の上に座り込んだアイチがいた。
ライドのにナオキは迷っていた、同じG3であるアーマーブレイク・ドラゴンの力に振り回されかけて
アイチがいなければ、大変ことになっていたとシンゴから聞かされて、内心ショックで
カードを持っているのが怖くて、シンゴに調整と称して、持ってもらった。





「だめだっ・・できねぇよ・・・・」
「ナオキ君・・」


(だからって、アイチに力を使わせるわけにはいかない・・俺の方が回復しているんだから!!
でもっ・・・怖えぇよっ・・・!!)

カードを持つ手が震えている、アイチはそれを見て、ナオキの手の上に小さなアイチの手を重ねる。
その柔らかなと体温に、迷いが一瞬消えた。

「大丈夫、ナオキ君ならきっと・・いざとなったら僕が止める。君ならできるよ、君は優しいし・・強いから」
安心させるように、アイチが微笑む。
まるで聖母のようで、ナオキの顔は僅かに赤くなった。

(こいつ、その辺の女子より可愛いっていうか!!男だろうがーーー!!)
怪我人に心配されて、情けない!!
生まれ変わると、外見だけ強い自分は嫌で、迷わず戦うって決めたじゃねーか!!と己を一喝し。

「俺はやるぜ、アイチ!!ありがとな!!」
「うんっ!」

そして、ナオキはドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオンにライドした。
虚無に支配されたユニット達は次々に、黙示録の雷で消えていく、それを興奮したようにアイチが見ている。

「凄いよ、ナオキ君!!」
この状況では、櫂はドラゴニック・オーバーロードも使えず本気が出せない。
相手の方も、ヴァーミリオンの出現は予想外だったのか、悔しそうに絶好調のナオキを見下ろす。

「チッ・・・!」
虚無の中へと、クリストファー達は姿を消す。
ナオキは追いかけるが黒い霧みたいなもの掴むだけで、まるで手品のように彼の姿は消えた。

「逃げられた・・けどっ・・・すげえな・・ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオン!」
力が溢れ出てきて、力の制御にはまだ自信はないができる気がすると、手を握るとアイチが近づいてきた。

「アイチのおかげだ、ありがとな!」
「僕じゃないよ、ナオキ君自身の力だよ」

少し間違えなくても、良いムードのアイチとナオキ。

「アイチ!」
間に入るように割り込む櫂、寝ているはずのアイチがこんなところにいて当然ながら小言を言われている。
ライドを解除して、ナオキも一息つくと。

「でもっ・・・ナオキ君、凄かったよね・・カッコよかった。櫂君もそう思うでしょ?」
櫂を見上げ、確かにG3使って平気な顔しているナオキは将来大物になる。
軽く体を動かして、ナオキは調子の悪いところがないかチェックをしているが、確かに成長の速度は速いが

気に入らない。

「えーっ、アイチ君。僕は?僕もカッコイイですよねー」
何処からか、レンがやってきてアイチに迫る。
カッコイイと言ってくれないと泣いちゃうぞと、顔に書くと「レッ・・レンさんもカッコイイですよ」と
言うと嬉しそうにどさくさに混じってアイチに抱きつく。

「レン様、そろそろ・・」
アサカが現れ、敵がいなくなって皆、冷静を取戻しつつあると報告し、アイチ達は移動する。
決勝はクリストファー達が不在で、不戦勝でチームFFの勝利となったが、レンが笑顔で手を振って女子を魅了させ
櫂はずっと不愉快な顔で、優勝したことへの一言では「いらん」の一言しか司会者はもらえなかったとか。

さらに、彼らは賞金の受け取りを拒否、二人とも王なのだからお金には困ってはいないだろう。
なるかみとむらくものカードも、「僕は別のクランを使うのでいりません」とレンからシンゴとナオキにあげてしまった。

「よっしゃーーー!お前の友達、気前がいいな!!」
「本当ですよ、G3のカードを・・・苦労の甲斐があったというものですよ」

「そうだね・・・よかった」

嬉しそうに小さな子供みたいにはしゃぐ彼らを、微笑みながらみているアイチ。
木の枝に乗ってレオンは、三人を澱んだ紫の目で見下すかのように見ていた。

「標的を変更する」
中腰のジリアンとシャーリーンは、レオンの指示にしたがい、当初狙っていたアイチよりも先に別の人間に

ナオキにターゲットを変更したのだ。







アイチは打ち上げ会を終えて、ナオキらと別れ、廊下を歩いていると。

「アイチ」
後ろを振り向くと、タクトが立っていた。
もしや、レオンかクリストファーかと身構えたが、タクトの顔を見てホッとする。

「よかったね、ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオンをもらえて」
「うん、ナオキ君達、凄く喜んでたし」
最近はゴールドパラディンとなんとか付き合っていけそうな気がして、前向きな気持ちでいられる。

「・・・アクアフォースについて、知りたくない?」
「えっ・・・?」

どうして、そのクランのことをタクトは知っている?
トップシークレット扱いで、一般には公表されていない情報のはず、タクトが指を鳴らすと景色が変化する。

空中にアイチは立っていて、真下には大きな島がある。

「あれは・・・?」
「アクアフォースのヴァンガードの末裔の住む国、ドレッドノート王国さ・・でもね・・」
タクトが指差す先に、嵐と海は凄まじい潮の渦が取り囲むようにして島のまわりにある。
まるで閉じ込められたかのような国、こんな状態でドレッドノートは島自体が削られ始めて
昔はもっと大きかったのに、現在の大きさにまで小さくなってしまったという。

「他の国にも忘れられて、本来は感謝されるはずだったのに・・」
悲しそうにタクトは、島を見下ろす、ドレッドノートの国民なのだろうか?

「感謝・・・?」
それが何なのか聞く前に、突風がアイチの視界を奪うとドレッドノートの王宮内部に立っていた。
皆、豪華な作りの一室の前で泣いている、皆、誰かの死を悼んでいるかのように。

タクトと共に中へ進むと、男女の遺体が沢山の花に囲まれて棺に納められている。
その前で呆然としている小さな少年、特徴あるアンテナのような三本の金髪・・レオンだった。

「他国の薬さえあれば、助かったというのに・・・彼らは私達を見殺しにしたんだわっ・・」
「もう終わりだ、英雄の血は絶えるっ・・・!!」
皆が、明日の夢も希望も見えずに涙を流し
恐怖に怯えているとレオンはたった一人の王家の人間として堂々とした口調で。

「俺がまだいる!!王家は滅んだりしない!!必ず、呪いを解いてみせる」

「呪い?」
もしかして、あの嵐と潮の渦のことだろうか?
確かに異常の様にも感じるが、そもそも誰からの呪いなのだろうかと。

「虚無だよ」
「・・・まさか!!」

もしもタクトの話が本当なら、虚無を封じたのがレオン達なのに
その虚無をレオンやクリストファーが使っているのはおかし話。

わけがわからないところで、現実の空間に戻る。

「今の話は・・・本当なのに、さっきの光景も・・・」
「本当だよ、だからアイチ。忘れないで覚えていて・・・絶対にだよ」

にこっと笑うと、タクトは小走りしていく。
すぐにアイチは追いかけるが、曲がり角をまがったところまでいたはずなのに彼の姿はない。



「嘘、どうして・・・・タクト君。君は何者なの?」
タクトの後ろ姿を最後にいた場所で、アイチは呆然と立っていた。




「ただいま」
とんっと、空中から降りてきたのはタクト。
そこには中国茶を淹れ終えたスイコが、笑顔で出迎えてコップに淹れて手渡す。

「ありがとう、アイチはすごいね。無意識でやっていることだろうけど」
「コーリンのお気に入りだもんねー」
笑いながらレッカに言われ、コーリンは全面否定するが年相応なツンな反応は逆に肯定してしまっている。

「それで、彼女にはどこまで?」
静かにスイコは、茶を一口口に運ぶタクトに尋ねる。

「まだ半分、今日はアイチも疲れているだろうしね。それに・・覚悟を決めないと・・・


ロイヤルパラディンを捨てて、戦うためにも」



それには、タクト以外驚いた。
大事にしていたことを見てきたから、大切なものほど捨てるのは躊躇するのに

それを捨てなければ、この先・・・虚無には勝てないことを全てを語るのはそれからだとタクトは言った。









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