いつか、助けがくる。
嵐の向こうで共に戦った者が、言葉だけの約束したが聞いた者が死ぬまで救援はこなかった。

自分の子供に、助けはくると伝え、その子が親となり、子供へ。
その繰り返しで、口約束で裏切られたのだと、子孫のレオンは思っていた。

他人の力なんて、頼りにしない、自分の力でどうにかする。
王が国民に頼れば、彼らを不不安させるだけだと、レオンはたった一人で毎日調べていたが

歴代の王達は、あらゆる方法を試して、全て失敗したという記録を呼んでいるうちに
諦めの気持ちが自然と生まれ、夜遅くまで公務をしつつ、調べていると王に継ぐ地位の長に心配をさせてしまう。

「貴方を見ていると、先王を思い出します・・」
「父上が・・」

最後まで、この国のことを、レオンのことを心配していた。
記憶の中の先王は立派で、母も優しく愛を注いでくれたのに、そんな二人を誰も救わなかった。


レオンも、まだ幼かったから仕方がないと皆はいうが、父と母のために何もできなかったことが憎かった。

力が欲しい、絶対正義の、何者屈しない、負けない力が!!


そして、ある日・・・それを手に入れた。







「よしっ、このカードケースにしようぜ!」
手持ちのカードが増えたので、新しいカードケースを買いに行こうとアイチと共に店に来ていた。
シンゴは手に入れたカードを額に飾って、拝んでいて、ドアの隙間からそれを見てしまったアイチ達は誘うのを止める。

新調のカードケースを手に、ヴァーミリオンを手に入れてから機嫌が良い。
武闘大会が終わった後も、自主練に付き合ってほしいとシンゴを誘ったら、ヴァーミリオンなしで勝ってしまった。

順調にヴァーミリオンの力に振り回されずにいるみたいで、雛の成長を見守る親鳥になった気分で見守っていると
やっぱり授業は相変わらず居眠りばかりで、放課後になって目が覚めた勢いで。

「よし、アイチ!俺の相手になってくれないか?」
「僕が?」
体力も戻ってきたし、ゴールドパラディンにも慣れておきたいし
今のナオキなら相手にとって不足はないと、返事をしかけた口を誰かに塞がれる。

「俺がやる」
「むごごっ!(櫂君?)」
後ろにはレンもクレープ片手に、こんにちはとアイチに挨拶、突然現れた二人にムッとした顔でナオキは。

「・・・・俺はアイチと戦ってみたいんだよ。お前じゃねーし・・」
「ほぅ・・、俺では余裕で勝てるとでも言いたいのか?」
予選負けし、武闘大会優勝した櫂よりも強いと?

挑発するかのうように、ナオキのプライドに触れ、頭に血が上ったナオキは「上等だ!!表出ろ」とか
すでに外にいるのに表というのは、何処なのですかと、シンゴがいたら確実にツッコんでいるだろう。

「あのっ・・櫂君。僕がやるからいいよ・・」
「黙ってみてろ、あいつ調子に乗り過ぎだ」
冷や水でも浴びせて、鎮火させないととか言っているがむしろ櫂に、水をかけるべきではと
見上げる櫂の目は何故か怒っていて、ナオキのことも任せるしかなかった。

三人で、テツに連絡して模擬戦場をレンがメールで手配してくれた。
カバンを放り投げると上着を脱ぎ捨て、制服のままで戦おうとする二人、とばっちりを受けないように
防御ガラス板付きの観戦室にいるアイチとレン。

「櫂の奴ってば、アイチ君のことになると頭の回転が鈍くなって仕方がないですねー。
アイチ君はそのまま鈍くても可愛いですけど」

レンは何を言いたいのかわかず、聞いてもいつかわかることだと言うだけで教えてはくれない。
本当に重要なことなら、教えてくれるだろうし・・レンを信じることにした。

(鈍いって・・・否定は、できないかも・・・)
反射神経が鈍いのも本当で、いくら鍛えても無理だった。
どうやったら櫂みたいにいつも冷静で、強くて、かっこよくなれるのだろうか。

「ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオンにライドだ!!」
「ドラゴンナイトネハーレンに、ライド・THE・ヴァンガード!」

炎と雷、ライドしただけで防護ガラスが揺れるほどの強さにアイチは瞬きも忘れて、見守っていた。
剣と長剣がぶつかり合う激しい音が消えてくる、しかし時間が進むにつれてナオキが疲れ始めてくる。

全ての攻撃を櫂に防がれ、まるで先を呼んでいるかのようにカードされている。

「くそっ・・!タージュランス・ドラゴンをコール!!ブーストするぜ!」
ナオキの背後に紅いドラゴンが現れ、櫂もG3のカードを二枚使用できることに驚いたが
すぐに切り替えると、今度はナオキを驚かすターンとなる。

ナオキがヴァンガードの知識がないのと、観客にアイチとレンしかいないからこそできる、カードを使う。

「見ろ、これが俺の本当の姿だ!全てを焼き付くす黙示録の炎!!
ライドTHEヴァンガード、ドラゴニック・オーバーロード!」

鋼鉄をその、熱風だけでも触れただけで溶かす炎にナオキは何か起こったのかわからない。
血の様に赤い炎から現れたのは、紫黒と紅の鎧と大剣を持つ櫂だ、目の前にいるだけだというのに腰が抜けてしまいそうだ。

「かっ・・櫂君!!」
人前でオーバーロードを使ったことに、アイチは慌てる。
レンは大人げないですねぇと、呆れながれも止める気は米粒ほどにもない。

「すげぇじゃねぇか・・さすがは、武闘大会優勝者ってところか!」
負けられられないと、ナオキは持っていた刃の大きな槍の様な武器に力を込めると室内に銀色の光が集まっていく。

「せっかくライドしてくれたが!!これでラストだ!俺の必殺、エターナル・サンダーボルト!!」
大きく槍を振り上げると、雷の光弾が櫂めがけて放たれるが、櫂は避けようともしない。
攻撃が届く距離にまで接近したところで、ようやく櫂が動いた。

「エターナルフレイム・・・!」
ごぅっと櫂の身体から、緋色の炎が現れると触れる寸前でナオキの攻撃は消されるが
その炎はアイチ達の見ているガラスに大きな亀裂が入り、炎に包まれて中の様子が見えない。

「櫂君、ナオキ君・・・・!」
外に出ようとするのをレンが、アイチの肩をそっと掴んで止めた。

「仕方がありません、アイチ君は此処にいてくださいね」
そういうとライドもせずに、熱いからとレンは自分の上着をアイチに預けて生身で飛び込んでいく。
三人の姿が見えなくなり一人になったアイチは、心配そうに櫂達がいたと思われる方向を見ている。

「なんだよっ・・・今の・・」
炎から発した白い煙のせいで、視界が利かない。
櫂はアレを喰らって平気なはずなものかと、辺りを警戒していると煙の中から白銀の刃が出てくると咄嗟にガードする。

「んなっ・・!!無傷って・・・」
身体どころか、鎧にさえも傷がついていない。
本当にヴァンガードになるために、学園に通う必要があるのかと疑う。

櫂の目は冷たく、瞳に映る者を凍えさせるかのようで生唾をナオキは飲み込む。
しかし、まだ勝負はついてない、戦える力はあると槍を振り回すが

まるでダンスでもしているかのように軽やかなステップで避けられる。

「力のコントロールだけでなく、体術もまだまだだな・・」
「なんだとっ!!」
避けるだけだった櫂が、剣で槍をあっという間に救い上げるようにして手離しさせると、壁に突き刺す。

「・・!!」
手放すまいと、手に力を入れる暇もなかった。
しかも槍よりも重いはずの、大剣をあんな早さで振るうなんて・・・だが、ナオキにはもう一つ武器がある。

「まだまだーーー!!」
上下に刃のついた武器を構えると、櫂に突進していく。
櫂も、地面を蹴り・・ナオキに向かって走っていく・・・・・・・が。


「はーい、そこまで」
素手でレンは、本気の二人の刃を受け止めた。

「何故止めた」と言いだけな顔の櫂と、「素手で受け止めた」と驚くナオキ。
いつもの天然電波受信という顔ではなく、ナオキも初めて見る隙のない姿に一体レンと櫂は何者だろうか?

本当に、ナオキと同じ学生なのだろうか?

「周りをよく見てください。この建物、壊れちゃいますよ」
戦っていて、室内だったということを忘れていたが壁には大穴が4つほど空いて、壁は焼け焦げて
誰が弁償するんだという話、どうやったらこんなガス大爆発みたいなことになるの?

「・・・・わかった」
ライドを解除すると、櫂の服は制服に戻る。
ナオキも納得できないが、これ以上室内では戦えないと、元に戻るとアイチが近づいてきた。

「櫂君、ナオキ君、大丈・・・かっ・・櫂君?」
「帰るぞ、後始末は任せたぞレン」
アイチの腕を引きずって、出口へと向かう。
本当はテツが処理するだろうに、彼の胃がとても心配だ。

見上げると、何故か不機嫌な顔の櫂。
こんな時は逆らわない方がいいので、あとでナオキにメールでもして謝ろうと「またねっ・・」と言って
ナオキを一人置き去りにして、櫂の後ろをレンが続いていく。

「・・・なんだよっ・・櫂ってやつ・・」
対して話もしたことないのに、あんな目をされる覚えもない。
でも、考えるとアイチと楽しく話をしていると櫂は、睨んできているかのように。

(まさかっ・・・男同士で・・アイチは可愛いけどっ・・けど・・やばいだろう!!)

部屋に戻っても、頭の中では櫂とアイチがイチャつく姿ばかり、イメージして
真夜中の3時にはついに一線を越えるという段階にまで達し、眠れんっと珍しく教科書を広げ
雑念を消すように、眠くなるようにと勉強していたら


朝日を拝んだ。



「・・・こんなに勉強したの、生まれて初めてだ・・・」
集中して勉強したので、雀のモーニングコールで時計の針が早朝を差していることに気付く。










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