「櫂、らしくないですよ」
「うるさい!」

先ほどから、ジ・エンドの力に半端振り回されている姿にレンはカードしつつ本調子だ。
否定するもしれないが櫂は、アイチの婚約という繋がりを自ら断ちきったくせに

自分自身にキズを負わせ、戦いにまで支障をきたしている。

本人にそのことを言っても、きっと理解も否定もするだろう。
ツンデレなのだ、どうしたものかとレンは溜息をつく、宮路では援軍も期待できないし

櫂に立ち直ってもらうしかないのだけど。

やはり、炎と水では相性が最悪だ。
しかも櫂はこんな調子。

「どうした?その程度か?」
「くっ・・」
アサカもテツもジリアン達に、梃子摺っている。
生徒会室の壁には大穴が空いており、唖然としている内藤達。

あれだけ偉そうなことを言って、まったく役にも立たない。

「正義の風を受けよっ!!蒼嵐竜 メイルストロームにライド!」
ガードしなければ、吹き飛ばされるほどの突風。
破壊された生徒会室の壁から現れたのは、最後のアクアフォースのカード。

「フッ・・我こそ、蒼龍の子・・我が手に来い!!」
「させるか!!」
光る剣を手に、櫂がレオンに振り下ろす。
しかし、一枚のカードを取り出し、櫂の前に投げつけた。

「潮騒の水将 アルゴスをコール、止めろ」
「チッ!!」

炎の力は半減され、戦闘中だというのにアイチの悲しい顔ばかりが頭にちらついて離れない。
こんなにも櫂の中でアイチという存在はいつの間にか、大きかったのだと

認めたくはなかったが・・認めなければ前に進めない。
レンも、アクアフォースのユニットの足止めされて、動けずにいた。

そうしている間に、レオンはカードを手にしてしまう。

「手に入れたぞ、・・・最強のアクアフォースのユニットを!」
風と共に、レオンの紫の目がさらに深い黒が混じった色へと変化。
仕えている主のはずのジリアン達も、一瞬身体が強張る。

「風を横糸、海を縦糸に紡いで生まれし竜よ。伝説に応え、あるべき形に!
蒼嵐覇竜グローリー・メイルストロームに、ライド!!」

レオンの軍服は青色へと変化し、軍帽と、腰には剣を持った『正義』を下す、海の大軍の元帥。

「さあ・・お前達に審判を下す時だ」
手をかざす、レオン。

「これはまずいですね・・」
双子は後方へと下がり、渋々だが内藤達も守らなければいけないがレンと櫂だけでアレを防御でるきか。

これも虚無の力はわからないが、先ほどから思い出したくもない過去の記憶が普段は記憶の底に封じているが
そればかりを思い出さされているのを、レンも昔の母と義理父と過ごしていた、憎悪する時間の中で戦っているようで
飲み込まれまいとしているが、櫂も同様のことが起きていた。

だだでさえ、アイチのことだけでも思い出すまいとしているのに。

「最初の一撃で葬られることをありがたく思うがいい!!ディバン・ブローイング!!」
剣先から、雷を帯びた光の光線がレン達に落ちていく。
その前を誰かが立ちはだかった・・・。


「その気高き魂の輝きで、闇を打ち払え!!光輝の獅子 プラチナエイゼルにライド!!」
アイチの髪は青いはずなのに、金色に一瞬輝くと、黒と金色の軍服へと変化する。
手にはアイチほどの大きさの大剣があり、持ち手が刃のところとにあり、それを掴むと金色の光が集まっていく。

「はあああっ!!」
レオンの攻撃を、完全に受け止める。
レンと櫂も、その光景に驚いた顔をしていたが、アイチは手をかざすとアクアフォースと同じく封印されていたカードを手に呼び寄せると。

「ナオキ君!!」
空へと高く投げると、上空にいるナオキが受け取ると。

「これからが、俺のブレイクタイムだーー!!白き翼を銀の剣に!!
天空のドラゴン、俺の下に降りて来い!!ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオン“THE BLOOD”にブレイクライド!!!!」

もう一段階上にライドし、明るめの赤と黄色の上着と戦士の服へと変化し
大型の剣を手にするとレオンに向かって振り下ろす。

「くらいやがれーーーー!!」
「チッ・・!!なるかみのヴァンガードか!」
風でガードをするが、レオンの頬に一筋のキズができた。
完全に防げなかったようだと、指で血を拭うと、シャーリーン達が心配してくる。

「フンッ・・ゴールドパラディンとなるかみか、アクアフォース対策も万全というわけか?」
「えっ・・??」
「そうですよー、アイチ君は先導者として彼を導いていたんですから、当然ですよ」
「ええっ・・・???」

アイチを置いてきぼりにして、レオンとレンだけで話が進んでく。
ナオキに導いた覚えなどないアイチは混乱している。

「グローリー・メイルストロームも目覚めたばかりで、全力は出せまい、次決着をつけるとするか」
そういうと再び、闇へと姿を消す。
レオンが消えたからなのか、アイチが来たからなのはわからないが
強引に引き出されていた過去の辛い記憶も抑えられた。

アイチは一息することもなく、櫂に近づいた。

「トシキ君」
櫂は以前の呼び方に戻っていることに、目を見開いたがすぐに冷静さを取り戻す。
真剣な顔をしているアイチ、櫂の顔を見るとアイチはいつも恥ずかしそうに
謙虚にものをいうのが大半だったので珍しかった。

「婚約はなくなったけど、僕、トシキ君のこと、好きでいていいかな?」
「・・・・!!」
アイチは自覚はないが、聞き方によっては今の逆告白ではないか?
ぽかんと、何て返事をしたらわからないでいたまま、アイチは返事を待っている。

「好きに・・・しろ」
恥ずかしそうな顔を見せたくないのか、俯く。
にやけているレン、追いついてきた早々面白くなさそうな顔のコーリンに、意味がわからないという顔のナオキと内藤達。

「そういえば・・彼、僕がなるかみのヴァンガードとしてナオキ君を導いたって・・・?」
「種明かしの時間ですね、アイチ君はアクアフォース対策としてそこの初心者君を
なるかみのヴァンガードに選んだのですよ」

ぶっちゃけ内藤が生徒会室に封じている、アクアフォース対抗のなるかみのヴァンガードの家系だったのですが
こんな人種で、アイチは早々に見切りをつけて、素質のあるナオキを導くことを選んだ。

「マジ!!」
ナオキは自分を指差して、驚いた。
光の先導者に選ばれていたなんて、その資質はレンも認めている。

「でなければ、アイチ君があんなにべったりしませんよ。早急に成長させる必要がありましたからね」
全部無意識にしていたことで、自覚はない。
途中からレンはアイチのそんな行動を読んだが、櫂の方がアイチが他の男にべっとりなのが許さなくてまったく読めず。

アイチは櫂の後ろをついていくが当たり前、なのが違う行動を取ったら苛立って
大人げないし、アイチが先導者としてナオキ以外を導く時、大変だ。

「・・・フンッ!」
先導者としての行動をまったく気づかなかったのか恥ずかしそうに、顔を背ける櫂。
笑いをこらえながらレンは、パンッと手を合わせると。

「さてと、アクアフォースのカードは全て手にいられました、貴方達も無関係ではありませんが
戦力にはならなさそうなので、後始末でもしといてくださいね。あと初心者君は借りていきます。
彼はアクアフォース対抗として有効なヴァンガードですから、・・・・・文句は言わせませんよ」


『はひっ!!』
言ったら最後、闇に葬られそうな黒い影が見え、ナオキも内藤も緋血の闇帝王の迫力に顔が真っ青だ。


このまま、テツの手配した船で宮地を離れようとしたのだが。
コーリンとアリ、リーを回収しなければと、部屋に一度アイチ達が戻り、ドアを開けると。



「皆さん、何をされているのでありますか?」

野次馬根性か、一番に駆けつけたのはシンゴだった。
その場にいた全員が、ピタリと動きが止まる。



ピシリッと、シンゴのメガネのレンズにヒビが入る。
全員ライドを解除していない上に、アイチは体系がわかるような軍服で誤魔化しのしようがなく
どうしようかと悩んでいると。


「仕方がありませんね、・・・・・・・・・・・消しましょう」
アサカにドラム缶を用意して、小柄なシンゴなら簡単に入るはず、あとは海辺りに沈めるだけだと
ナイスアイディアが浮かんだような顔をしてるのは、まだ『緋血の闇帝王』と言われたのを気にしているのだろうか。

「だめです!!」
「おい!!」

ナオキとアイチに止められて、シンゴは九死に一生を得る。











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