「君達も、傍観の一族の者と会っているよ・・三人のアイドルユニットとしても活動しているといえばわかるかな」

十分すぎるほどのヒント。
ぼんやりとだが意識して、PSYクオリア使った後、夢の中でコーリン達に会ったような気がする。
歴史を正確な目線で記録し、次の世代へと繋げていくための一族。

「何故、お前がやらない。お前にもPSYクオリアがあるだろうが」
不老不死なら時間は、たっぷりとあるはずだと櫂は言うが、タクトは首を横に振る・・それは無理だと。
カードの力で確かに、不老不死になったが己の行動にはいくもの制限があり、手をある程度貸すことはできるが
自ら中心となり、時代を動かしてはならないと。
声の届くアイチに、ヒントを与えることしかできなかった。

「このままだと、虚無の力は本当に覚醒してしまう、レオン・蒼龍・カイオウは虚無を利用しているつもりだけど
奴の方が何枚も上手だ、本当の奴の狙いは・・・−−−」



「そこまでにしてくださいね」



アイチの横を何かが通過した、ユニットの攻撃だ。
それはタクトの右肩に直撃して、タクトは倒れるのと同時に、景色も元に戻る。

「タクト君!!」
アイチはタクトも元へ、櫂は振り向いて攻撃を指示したヴァンガードを睨んだ。
カエルのフード付きパーカーを着たクリスが顔に黒い影を落とし、歪んだ笑みを浮かべている。

「お前か!!」
すぐにオーバーロードにライドするが、用が済むとさっさと逃げていく。
追いかけるよりもタクトの手当の方が先だと、櫂の大声で旗艦にいた全員たたき起こされた。

幸いにもコーリンがそのまま乗っていたので、エミと協力して治療に当たる。
しかしタクトは、ある程度傷をふさがった辺りで自ら治療を拒んだ。

「時間はかかるけど、不老不死だからね・・君達はこれから戦いに行くのに、こんなところで力は使ってはだめだよ」
「タクト・・・」
心配そうな顔をコーリン、彼からもらったイヤリングが悲しげに揺れている。
クリスがきたと聞いて虚無から解放されたリーと、アリもクリスがこんなことをしたことが信じられずにいた。

最後の一線、人を平気で傷つけるようになってしまったのだ。
次は人の命も奪うことも躊躇わないかもしれない。

「その前に止めるよ」
ポンッと、安心させるかのようにリーの肩に手をのせるアイチ。
その場にいるヴァンガード達が、虚無からクリスを助けると約束するかのように穏やかに笑みを浮かべている。

「ありがとうございますっ・・・」
涙目になって、リーもアリも感謝した。


結局、警戒して皆、大して眠れずにいた。
森川のイビキで、同じ部屋にいた全員が不眠となり、ミサキの肩に寄りかかるようにエミが眠っている。

アイチはというと、櫂に最初寄りかかっていたが今は膝枕して、櫂は何でもない顔でカードを再チェックしていた。

レンは念のため、起きてブリッジに光定とババ抜きをしながら待機。
「僕のPSYクオリアを持ってすれば・・・ババなど!!」とか言って、光定に連敗しているとか。
テツとガイは、無視して海上でアクアフォースに襲われた時の艦隊の動きをチェックしていた。

「おーい、アイチィ・・起き・・・」
眠そうなしながら、アイチのいる部屋に来たのはナオキ。
だが、櫂の膝の上で眠るアイチを見て、意識がはっきりとし、そのままドアを閉めた。

(今のは・・そうだ、婚約者なんだよなっ・・解消したっていったけど・・あれでどうして付き合ってないんだよ!!)

気のせいかもと、もう一度ドアを開けると今度はアイチが起き上がって背伸びをしている。
やっぱり見間違いと、そう思い込むことで決戦になるかもと気合を入れ直す。


「相手は、心の闇を引き出す虚無だ。
気持ちを強く持つこと、それからアイチ君はすまないが、前線へ・・出てくれないか?

君の力なくして、勝利はありえない。それでいいかい」

一番そのことを嫌う、櫂に尋ねると無言だった。
顔はいつもの五割増しほど、不機嫌だが、虚無の力が、内面的なものと体験済みなので文句は言えない。

「僕は艦隊の指示を出すから此処を離れないけど、無理はしないで」
「はい、わかりました」


島が目視でも確認できる距離まで近づくと、アイチ達は旗艦の甲板の先端に立つと潮風の香りがする。

「あれか・・まだ手の平ぐらいにしか見えねーな」
双眼鏡でも持ってくればよかったと、後悔するナオキ。
AL4連合国のように科学技術が進歩したわけでもなくて、ただ見捨てられた復讐のために虚無の力を手に入れた
哀れなアクアフォースのヴァンガード達の住む島。

(どうすれば、皆を助けられるんだろう)
皆が被害者で加害者で、誰も悪くて・・アイチは皆を丸ごと救う方法をずっと考えていた。
でも思いつかないまま、ついにドレッドノート王国まで来てしまった。

「アイチ君、どうかしたんですか?また櫂がいじめましたか?」
「いえ、トシキ君は別に・・」
覗き込むようにして、レンがアイチに聞いてくる。
大体アイチが悩ますのは櫂だと、その元凶は目を閉じて、さっきから微動だにしない。

実は寝ているのではとナオキは、ちょっと突っつこうかと考えている。


「んっ?」
上に何かいるような感じがして、太陽の光を手で庇いつつ、見ているとそれはユニットだった。


「てっ・・・敵だーーーー!!」
井崎の大声に三人は、顔を上げるとアクアフォースとグレートネイチャーのユニットの大群が

島から空に上がってきている。

戦闘開始のサイレンと共に、他の艦にいたヴァンガード達は上を見上げる。
あの島は、虚無の力とヴァンガードもレオンと双子以外にもいると考えた方がいい。

しかもアクアフォースの。

「では、行きましょうか」

アイチの呼びかけると自身が中央に、左右に三人が立っていた。
いつでも戦闘に入れるように、ジ・エンド、ヴァーミリオン“THE BLOOD”、ブラスター・オーバーロード、


そして、プラチナエイゼルにライドしているアイチ。




高くジャンプすると、そのまま上空にいるユニット達と戦っていく。
万が一、虚無の力が仲間を飲み込んだ時のことを考えて、皆心をいつも以上に引き締めていた。

そんな中、アイチに向かって真理の守護者 ノックスが突進してきた。
すかさずアイチが交すと、ノックスが走ってきたグレートネイチャーを多数コールしたクリスがいる。


「クリス君・・・」
前よりも、虚無の力が増していると、冷や汗がアイチの頬に流れる。
見下すかのようにアイチに笑いかけ、旗艦の中でリー達はアイチと向かい合うクリスを見ていた。


「てめぇっ、あの時の!」
アイチの前に、ナオキが剣を持って守るように立つ。
レンと櫂も駆けつけたいがアクアフォースが邪魔で、近づけないでいた。

「君、邪魔だな。相手なら後ろのやつをあげるよ」
方向転換してノックスがきて、技をぶつけても効いていないのか、スピードが落ちずに
このままではアイチも巻き込んでしまうと、矢も得ずアイチから離れる。

「こんな解放された気持ち初めてだよ、それを奪おうとするのかい?君は」
「そんな気持ちに流れちゃだめだ、君は大切なものを失ってしまう・・その失いかけたものが何なのか・・教えてあげる!!」

大剣を手に、左右にすれいがる・ダブルエッジ、守護聖獣ネメアライオンをコールし
虚無の力を借りて、多数のユニットをコールしたクリスに対抗する。


「アイチッ・・!!」

ぶつかり合う二つの力。
それはエミ達にも届いており、戦っているのにかかわらず、敵もその空気の振動の方角を見た。


「ポラリス!!」
「すれいがる・ダブルエッジ!!」

クリスの状態は、レンの時以上に闇に喰らわれてのを彼の澱んだ目が語っている。
早く助けなければと、剣を構えるが届く前にユニットをコールされて邪魔をされてしまうと攻撃の押し合いが続いていると

突然、頭を抱えて苦しみだした。

「ぐあああっ・・・もうやめろっ・・僕は・・」
「・・・クリス君・・・」

もう彼もこんなことをしたくないのだ、でも自分では止められない。
早く助けてなければ、心から崩壊してしまう。

〈マイ・ヴァンガード・・〉
「君はっ・・」

懐かしい声が聞こえて、それが嬉しくて涙が出てきそうになる。
肩で息をし、クリスは殺気の籠った目でアイチを睨むが、アイチは大剣を消すと、丸腰でクリスに突っ込んでいく。

「なんのっ・・つもりだ」
「・・・・・−−−が、いるから・・」

素早い華麗な動きで、クリスのコールするユニット達の攻撃をかわし、至近距離までクリスに接近すると。


「勇気の剣よ!!我が手に宿れ、ブラスター・ブレード・スピリット!!」
半透明なブラスター・ブレードの剣がアイチに手に、そのままクリスの身体を貫いた。
まさかの行動に、全員が固まったが、クリスの身体からは血ではなくて、黒い靄のようなものが抜けていく。

「・・ありがとう・・・」
淡い蛍の様な光が、アイチの前に生まれる、それはゴールドパラディンのクランのブラスター・ブレード・スピリットだった。
実体のない剣だからこそ、クリスの内にいる虚無を倒せた。

「先導君!」
パラボナ・ムースに乗ってリーと、アリがアイチの元へ来ると気を失ったが苦しそうに息をするクリスを託すと
すぐにアイチは戦場へ、新たなブラスター・ブレードと共に。



「君達はいつも傍にいてくれている、見えなくても・・」
それが嬉しくて、アイチに勇気をくれる。
前線にアイチも合流すると、メガラニカ島へと上陸を果たす。


最初に土に足をつけたのは、ナオキとレンだった。
見た感じリゾートアイランドと同じく、南国的な島のようだと、熱くて死にそうだとナオキは汗を垂らす。

「あっ、アイチ君とついでに櫂ですね」
「やっときたかー、こっちだぞーー!」

ナオキが手を振ると、アイチが櫂と一緒に降りてきた。
櫂はわざとスピードを落として、アイチが追い付いてくるのを待っているのを知っているのはレンだけのようで
にやけながら「遅かったですね」というと、櫂は顔を背けた。

「・・・俺のヴァーミリオン“THE BLOOD”と一緒に封印されたやつ・・出てこなかったな」
「きっと、この先に」

レンの瞳が白く淡く輝く、PSYクオリアが反応する。
アイチにも感じる、この林の奥にもっとも強い虚無の力を感じることを。

「行こうぜ、そしてぶっとばしてやろう」
「賛成ですねー」
「・・・行くぞ」

敵に攻撃も考えて慎重に進む。
すると白い石作りの崩れかかった神殿があった、その出入口にレオンが立っていた。


「ようやく来たか」


ドレッドノート王国のレオン・蒼龍・カイオウの国王である海神王が。
















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