「ユニット達を収めていただけませんか、どうか・・」
「今更、無理だな。お前にもわかるはずだ・・止められないところまで俺達はきてしまった、これは報いだ・・!!」

世界を救った者に対しての、この仕打ち。
島は荒波で削られて、病気が一度蔓延すれば、薬も限られた種類しか作れず
ただ死を待つしかない、絶対正義にしてもっとも力のあるクランの行きつく先がこんなのだと認めたくない。

「無駄だ、アイチ。こいつは覚悟を決めてこの場に立っているのなら、答えるべきだ」
紅色の拳銃と光の剣をレオンに向ける、仕方がないですよとレンも同じく剣を構える。
ナオキもいつでも戦える準備ができている、そんな中、アイチの中にレオンの記憶でいつも苦悩し

力のない自分を憎んでいたことを。

「風を横糸、海を縦糸に紡いで生まれし竜よ。伝説に応え、あるべき形に!
蒼嵐覇竜グローリー・メイルストロームをコール!!」
そして、レオン自身もメイルストロームにライドし、巨大なドラゴンが天高く吠えると空気の振動で身体の中から揺れる。

「きやがったぜ・・!!アイチ―、飛ばされな・・・・」
自分に捕まれという前に、櫂がアイチを背に庇いつつ、片手だけで支えている。
アイチも櫂が突然腰に手をまわしてきたので、ぽかんとしていた。

「早ッ!!」
「いきますよ、初心者君」
レンの後に続いて、ナオキが攻撃をする。
空中にむやみに飛ぶと、風に押されて戻されてしまうので、少しずつ距離を縮めるしかない。

「皆、僕の後ろに」
アイチなら、攻撃を完全防御可能であり、攻撃の混じる風をアイチが金色の壁を作り。
その隙にナオキが隙をついて、空から雷を落とす。

「くらいやがれ!!」
空からの攻撃をレオンがガードすると、力をためた櫂の番だ。

「エターナルアポトカリス!!」
赤黒い炎がレオンにめがけて伸びていく、避けることもできず直撃した。
爆発によって起きた煙が収まるのを待っていると、僅かに負傷したレオンがまだ立っている。

「あれでもダメなのかよっ!!」
「でも・・ダメージは負っているよ」
このままいけばと、アイチはレオンの背後にいるグローリー・メイルストロームの様子がおかしいことに気付く。
ユニット自体に黒い影がちらついている、その眼はまるでレオンを見下ろしているかのような。


「俺は・・負けるわけにはいかないんだ!!」
紫の色がさらに黒へと染まる、グローリー・メイルストロームはまるで待っていたかのように手を伸ばす。

「逃げて・・・レオン君!!」
アイチの声に、後ろを振り向くと無機質な目のグローリー・メイルストロームが
レオンにめがけて、手を伸ばし・・・その青い爪は彼の身体に深く食い込んだ。


「なっ・・!!」
全員が息を飲む、しかし血は出ていないが、レオンは目を開いて信じられないとグローリー・メイルストロームを見上げる。

『我らの最後の封印は、蒼龍の子の虚無に染まった魂を手に入れること・・堕ちたモノだな』
レオンの身体から、光を抜き取ると胸に埋め込み、満たれたといわんばかりの咆哮を上げると
空高く飛んでいく、途中アクアフォースのユニット達が吸い込まれるように消えていく。

「どうなっているんだよっ・・!こいつのユニットじゃなかったのかよ」
井崎達は突然終わった戦闘にアイチ達にいる島へと、集まっていく。
それはジリアン達も同じで、島のヴァンガード達の中で戦える状態なのは双子のみ。

レオンに何があったのかと慌てて島へ。

「レオン君、しっかりして!!」
アイチが何度も呼びかけるが、反応はない。
まるで抜け殻のような目で、何も映さない瞳にレンが脈と心音を確認する。

「弱くなってきている・・このままでは彼は時期に死んでしまいます。魂を抜かれたのですから仕方がないですが」
「マジかよ、あいつ・・こいつを利用したっていうのかよ!!」
空を睨むが、もうグローリー・メイルストロームは見えない。
暫くするとミサキ達も到着した、シンゴも「ご無事でありますか!!」と心配してきてくれた。

「グローリー・メイルストローム、奴は虚無に乗っ取られていたんだ。
そして昔掛けられた最後の封印を解く鍵として、蒼龍の子の虚無に染まった魂を手に入れて・・逃げた」
淡々と櫂は、それを双子達にも聞かせた。
すぐにレオンに駆け寄るが、レオンは返事をしない、まるで人形のように体を揺らしても揺れるだけ。

いつも、堂々として気高いレオンの姿はない。

「そんなっ・・レオン様ーー!!」
泣き叫ぶ二人に、さっきまで戦っていた皆の心は痛む。
どうにかして助けてたい、しかしどうやって助ければいいか・・方法がわからない。

『方法はあるよ、アイチ』
「・・・・タクト君?」
頭に直接語りかけるように、旗艦でコーリンに看病されながらその方法をアイチに伝える。
櫂達はレオンのことでアイチのいつもと違う様子が、皆に隠れて見えていない。

「お願い!!敵にこんなこと頼むはおかしいのはわかっているけどっ・・・・レオン様を助けて!」
「お願いします、私達の命をあげますからっ・・・」
泣きながら、双子は地面に手を付けて櫂達に頭を下げる。
確かにあまりにも可哀相ではあったが、誰もが最初の一歩を踏み出せずに、互いの顔を見つめるばかり。

「助けよう、皆」
強く、だが静かにアイチは皆に言った。

「アイチお兄さん・・・!!正気ですかっ・・だってこいつらのせいでロイヤルパラディンは・・」
「そうです、僕も同感なのですよ!!先導君!!」
カムイだって同じ目になったら、絶対に許せないのにアイチは許し、さらに助けようまで言い出して
お人好しにもほどがあるとエミにまで怒られてしまったが、アイチは考えを改める気はない。

「彼だって必死だったんだと思うよ、皆を助けたいって・・だから今度は僕らが助けるんだ。
ミサキさん、ヴァンガードの力ならレオン君を一時的にだけど命を繋げられるはずです。

シンゴ君も、お願い、力を貸してくれないかな」

覚悟を決めたアイチの瞳、ミサキは目を閉じ、アイチが決めた事ならと手助けをすることを決めた。

「・・・・ええ・・・、わかったわ。やってみる」
「ミサキさんまで・・・・ああーーーっ、もう俺も手伝うぜ!!」
レオンの手を握り、ユニットを使うとの同じ要領でレオンの命を繋げる。
これで一先ず大丈夫だと、アイチはナオキに耳打ちをし始める、最初ナオキは「マジ!」と驚いているが
それでも秘密の内緒話は続いて、櫂は顔は動かさずに目を細める。

「でも、繋いでも魂が・・・・って、アイチ?」
エミがレオンに力を与えていると、肝心のアイチがいない。
何処だ?何処だ?と皆が、探していると離れた場所で一人こちらに手を振っている。

「あとはお願いします、ちょっと行ってきますので」

行くって・・何処へ??
誰もが、アイチに聞く前にペリノアにライドし、足に力を入れる。
そのまま、突風を巻き起こすほど高くジャンプ後、オーラブースターを起動させ、さらに天高く飛んでいく。

グローリー・メイルストロームのいる場所は空のさらに先、宇宙。
大気圏を突破するためには加速も力も足りない、そこでナオキの出番だ。

「行くぞ、アイチ!!」
ナオキもまた、高く飛行し後ろから突き上げるかのように、アイチの背中を押す形で力を与える。
さらに加速し背中から金色の翼が現れると、まるで彗星のように光を帯びて、あっという間に見えなくなった。

「アイチの奴・・何処に・・・おい!!なんか落ちてくるぞ!」
森川は、アイチの意味不明な行動にレオンはどうすんだよと途方に暮れていると、空から何かが落ちてきた。

「なんですかーーあれは!!」
レイジの指差すものは、巨大なビームが降り注いでくる。
咄嗟に櫂が防御してくれたが、島だけではなく海にも降り注いで津波を作り、船が大きく揺れていた。

「きゃっ・・!」
コーリンは近くの柱に捕まり、耐えている。
タクトは天井へとまっすぐと澄んだ目で、宇宙へと飛んだアイチの無事を祈るしかできなかった。

どんなに力があっても、見守ること以外できないことが悔しい。



「どうか、蒼龍の民を、世界を救ってくれ・・・アイチ」










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