とにかく忙しい一年だった。
レオンの件は虚無に操られていたという説明と、アクアフォースという忘れられたクランの説明にアイチ達は追われていた。
ゴウキ達の紹介で、物質のやり取りの貿易の方も軌道に乗りつつあり
情報処理に長けたシンゴも「先導君のお願いですから・・・」という理由でデレてくれて
皆が一丸となって、ドレッドノート王国の再興に手を貸してくれている。
「どうして、此処まで良くしてくれるのか俺には理解できん」
「えっ・・」
神殿にアイチと、レオンが二人だけ。
虚無の離れたグローリー・メイルストロームをカードを渡すために来ていたのが、レオンの言葉に目丸くする。
「お前の大事な物を奪ったのだぞ」
「うん・・、でもねっ・・これ見て!」
ゴールドパラディンをレオンに見せると、僅かに驚いていた。
タクトに今回は頑張りましたね賞をもらったのだと新たなるブラスター・ブレード。
ブラスター・ブレード・リベレーター〈解放者〉。
タクトと協力して、ロイヤルパラディンの仲間達をゴールドパラディンへと転生させるような形で復活させた。
「君は蒼龍の民を助けたいと頑張っていた、だったから僕が君を助ける。
あの時、誰も助けてられなかった代わりに、僕じゃ・・・ダメだったかな?」
悲しそうに目をされると、追及する気も失せ、アイチからカードを受け取り、肩を軽く叩き
真横を通りすぎていき、背中を向けたまま手を振っていく。
「お前には借りができたな」
その後ろから、ジリアン達がついていく。アイチに軽く頭を下げると、レオンの後ろに続くように進む。
宮地の方も、王が開国宣言をし、アイチはシンゴとナオキと共にクレイアカデミーへ。
クリスとリーの容体も回復し、ドクターOにアイチが頼み、転入させてもらうことに
学園生活は宮地からの転入生で騒がしく、楽しく
あっという間だった。
あれから数年、アイチはゴールドパラディンのクランを持つヴァンガードとして
そのアイチに続くようにシンゴとナオキも、クァドリ・フォリオに来てくれて頼もしい限りだ。
王軍直轄の騎士団隊長に超抜擢されたが、アイチはほとんど出撃せずに、自身かナオキばかりが戦場に出されていた。
「あいつ・・−−、『まだまだだな』とか言って扱くんだぜ・・・」
「あははは・・、まあアイチを戦わすわけにはいかないから、お前らは早く強くなってほしいんだよ」
酒場で愚痴を吐く、ナオキ。
その愚痴に付き合っているのか三和、「せいぜい頑張るのであります」と嫌味を言うシンゴ。
「でもさ、先導隊長・・じゃなくてアイチの奴、最近元気ないっていうか・・いつも眠そうなんでよな」
書類を届けに部屋にいくと、机の上で紙にミミズ文字描きながら眠っていた。
声をかけると慌てて誤魔化したが、怪しい・・!!
(もしや、櫂の夜這いとか・・・)
(まっ・・まさか!!あいつが??婚約解消しただろうが!!)
シンゴに聞かれないように、小声で話をする。
アイチも櫂も、立場も安定した来たし結婚を、と周りは二人に早くくっついてほしいようだ。
「何を話をしているので、ありますか?」
「「気にするな、大したことじゃない」」
シンゴに背中を向けてつつ、三和とナオキの内緒話は続く。
ミサキの占いでも、アイチと櫂がいつくっつくのがまったく読めない。
このままだとレンあたりにでも、取られてしまうというのにじれったいと二人は思っている。
「よし、これで全部だな」
疲れたように、深夜の執務室にいて、最後の準備をしているとドアをノックする音が聞こえてきた。
入ってきたのは櫂で、正装を纏っている。
「まだ残っていたのか?」
「トシキ君・・・・こそ。どうかしたの?」
さりげなく、後ろへと例のモノを隠す。
この数年で櫂に隠し事が上手になれたものだと、自分を褒め称えたい。
「あまり煮詰めるなよ、さっさと帰れ」
「ありがとう、すぐに帰るよ」
そう言うと、櫂は部屋から出ていく。
これが『最後』になるかもしれないので、アイチは涙をこらえて。
「あのっ・・おやすみなさい」
「・・・・ああ」
いつもの挨拶だと、櫂は扉を閉める。
この夜は新月、月明かりがあったのなら、きっとバレていただろう。
今にも泣きそうに潤んでいるアイチの瞳が。
机の絵には無事に卒業した時の皆で撮った写真が飾られていた。
エミもバミューダ△のヴァンガードとなり、海岸を防衛を担当。ミサキもオラクルシンクタンクのCEOになったとか。
カムイも友人の二人と一緒に祖国のヴァンガードとして、大活躍して
森川と井崎も同じように今や立派なヴァンガードになったとか。
アリ達は光定のローマ帝王国に家族と一緒に移り住んで、ヴァンガードをしている。
レンも他国との交流も積極的に行って、頑張っていると。
「大分、落ち着いてきた・・・もう思い残すことはない」
二回に渡る戦争終結に貢献したとして、櫂から送られたクリスタルで作られた星の勲章を机の上に置く。
隊長の証と共に、着ていた軍服も。
荷物をまとめると、その日は家に帰ってはこなかった・・・次の日も・・次の日も。
泊まりで仕事をしているのだろうと、差し入れを持ってシズカは軍本部にくると本部は慌ただしかった。
「あら?」
他国からの侵入というか、「誰か王を止めろーーー!!」とか叫んでいる。
「目撃証言を集めろ!!」とか内輪もめのようだ、顔パスでアイチの執務室へ行くと皆が集まってた。
「落ち着けって、櫂ーー!!」
「とっ・・とにかく、冷静にっ・・あいつが行きそうなところを潰していこう・・なっ!!」
男二人がかりで今にも暴走しそうな櫂を、止めている。
いつでも避難できるように、扉のところで皆が心配そうに見ている後ろからシズカが話しかけるとその場の全員が驚く。
「どうかしたのですか?」
「えっと・・・・先導隊長が・・・その辞表と・・・家出・・いや、亡命か・・・なんていえばいいのか」
綺麗に折りたたまれた制服と、勲章と認証カードに階級を示す腕章。
辞表と大きく墨で書かれた手紙はカムイ直伝の習字によるもの。
「あいつはっ・・まったく成長してないじゃないか!!」
「お前も人のことっ・・決していえねーぞ!!」
「今、シンゴに調べてもらっているから落ち着けよ!!」
手紙を含め、部屋を燃やす勢いの櫂。
次の日、アイチの部屋に行ったナオキが手紙を発見し、三和に内密に報告。
シンゴの情報ネットワークで探していたが、アイチに話があると櫂が訪問して
バレた。
「三和、お前ついてこい!!」
「うげぇ・・他の奴らに任せておけばいいだろうが・・・。
王自らアイチを連れ戻しに・・クレイアカデミーの時と振り出しじゃないか」
今度こそ、強制送還だと嫌そうな顔の三和。
アイチだって、もう大人なんだし、考えがあっても亡命?なのは手紙の内容を読めば納得いくだろうに。
「連れ戻す?とんでもない」
にやっと、悪い顔で笑っている。
その手に『あるもの』に、三和は叫んだ、ついに櫂が王手をかけた。
最近の、櫂の行動の意味が明らかになる!!
おおっ!と野次馬が驚いており、ナオキは固まり、シズカは「あらあら」と笑っている。
彼の手には、指輪のケースがあり
中には銀色と金色のシンプルな指輪が入っている。
ある意味、犬の鎖だと、アイチに首輪をつける気だ!!!とナオキは内心、そう思わずにいられなかった。