宇宙へ、高く飛んでいく金色の羽を今でも思い出す。
置いて行かれた、いつまでも気弱で、引っ込み思案ではないことは、とうの昔に感づいていたが

恐かったのを、その時の感情を今でも思い出せる。
櫂の元を簡単に飛んで行ける翼を、アイチはいつでも広げて飛んで行ってしまうことを。

その羽を広げて、アイチは何処かへ飛んで行った。



「ついに櫂の野郎、アイチお姉さんに見捨てられたかー・・vv」
「アイチが家出だ?お前、なんかやったんじゃねーのか?セクハラとか」
「森川・・・それはないと思う・・・か・・・・・」
「来てないわよ、来ても教えないけど」
「アイチが家出?迷子になっているだけじゃないですか?」
「今、ツアー中だし、来てないわよ」
「アイチ君が?僕らのところにもきてないけど、家出って・・?別居かい?」
「愛想つかれちゃいましたかぁ、ついに天罰が下りましたねー櫂、ププッ!!」

最後の奴のところには、いないことを信じていったがそいつのいた部屋をブッ飛ばして帰ってきた。
三和は「国際問題にされる」と、脱力したように肩を落としていた。
ナオキは持っていたボードにアイチの知り合いの名前を消していく、逃げ込みそうなところは全て潰した。

明日はクレイアカデミーにでも、行こうかと考えている。
ない脳みそを使って、アイチの行きそうなところを考えている、これでも4強の一人なのだし
少しは頭を使わないと蟹味噌になりますよ、とシンゴに笑われてしまう。

「うーん、アイチの行きそうなところなぁ・・」
実は適当に無人島とか、雪山あたりじゃないかと考えながら帰宅、今日の櫂のせいでサービス残業だ。
いつか労働局あたりに訴えたいとポストの中に、一枚の手紙。

「なんだ・・こりゃ?」
このところ、アイチ捜索でポストもロクに見てなかったが
消印は数日前になっていて名前のところを見て、夜中だというに思わず叫んでしまう。











あれから数週間、アイチはレオンのところに逃げ込んでいた。
荷物をすれいがる・ダブルエッジに乗せて、やってきたとは心底驚いたが何を考えているか

『僕を雇ってください』

などと、レオンにお願いしてきた。
レオンの次に地位のある長と共に、何かあったのかと尋ねるがアイチは口を割らなかったが何となく想像はついた。

レオンのことを独断で助けに、宇宙へと飛び出し、各国のヴァンガード達の命令違反も全て自分で背負ったのだ。
その代償として、高価で価値のあるカードと作り置いて、地位も名誉も全て返還。

クァドリ・フォリオを、誰にもそのことを相談せずに飛び出してきたのだ。
炎天下の中、シャーリーンにもらった大き目の麦わら帽子を被って海岸で食事の毎日魚を
一人で釣っている姿は、あまりにも痛々しく帽子の上にはカモメが座り込んでいる。

「はぁ・・・」
その様子をレオン達は、林に身を隠して見守っていた。
アイチが何も話さないのは、負い目を追わせたくないがためだろう。

そのことを言わなくても何となく気付いているレオン達としても、このままそっとしていくのも選択の一つと考えたが
やはりだめだと、レオンは手紙を書いた。

「はぁ・・」
結局櫂のヴァンガードになれたけど、功績も上げられずにただの形だけなれただけでもありがたいと強引に満足した。
アイチの代わりに4強となったナオキが三和と共に櫂を守ればいい、ナオキは男だしきっと頼りになる。

自分なんかよりも。
そう考えるたびに、泣きそうになる。

泣き虫はクレイアカデミーの時に卒業したはずなのに、竿を持つ手が震えていく。
ゆらりっと・・海面が揺れると、誰かが海面の浮遊し、立っていた。


「見つけたぞ、アイチ」
涙の溜まった顔を上げると、呆れ顔のナオキと三和がいた。
ついにバレたと、真っ青になるアイチ、頭の上にいたカモメが飛び立っていく。

「どっ・・どうして此処が・・」
「後ろの奴から手紙が来て、引き取ってさ・・・」
振り向くとそこにはレオンがいる、アイチは今後虚無対策としてもっとも有効な先導者で
PSYクオリアも持っていて、不用品みたいに引き取ってほしいなどとおかしいなことを言うと
木の影に隠れている長は考えていたが、彼らの話を聞いて、レオンの優しさが見えた。

「毎日毎日焼き魚、刺身、カレー(櫂直伝)のレパートリーのメニューしかない奴などクビだ!!」
カレーとお菓子は美味かったが、栄養が偏るとジリアンの証言があったが
甘すぎる菓子にジリアンの体重はアイチが来てから3キロ太ったと、笑顔でシャーリーンは話す。

「というわけだ、先導。さっさと国に帰れ!!俺の国は俺でどうにかする!!」
「でっ・・でもぉ・・」
ピシッと、アイチを指差すレオン。
それでも今更戻れないと、躊躇っているアイチに三和が、手を上げ、顔を引きつらせていた。

「アイチ・・・それと、櫂も・・・そろそろ・・・来てるぞ。どうしても外せない会議終えてからくるって・・・多分そろそろ」
真っ青になるアイチ、慌てて釣り道具を片づけて逃げ出す。
海に浮いていた三和が、降りると「何処に行くんだよ」とナオキが声をかけた。

「トシキ君なら、すぐ到着する!!早く逃げっ・・・・」


ドスンッ!!


アイチに当たる寸前で、ドラゴニック・オーバーロードにライドした時と同じ大剣が一歩前に落ちてきた。
髪の毛数本切られ、ハラリ・・と砂地に落ちていく。

きた、ついにキターーーー!!



「そこまでだ、アイチ」
怒りが溜まりに溜まったような、声だけでもその怒りの数値が振り切っているのがアイチにも手に取るようにわかる。

空にいた櫂が、砂地に降り立つ。
アイチは後ろへと下がると、来ていた服を脱いで、カードを構える。

手にするのは月影の白兎 ペリノア。
一気に加速して逃げ出そうといるのだが、その前にアイチの細い腕を櫂が握るのが早かった。

「逃げるな、俺の目を見ろ、アイチ。また相談もなくて飛び出して、覚悟はできるんだろうな」
「だっ・・だから責任を」
「誰がお前一人に責任を取れと言った、大体クレイアカデミーには勝手に行くわ、レンとのこともそうだが
気弱なくせに、一番頼ってもいい時に勝手に動いて、一番許せないのは今回のことだ!!」

何だか痴話喧嘩みたいになってきたぞと、中腰になって三和達はアイチと櫂のやり取りを見ている。
レオン達は立ったまま、一応付き合ってくれていた。

「だから、俺はもう我慢ならん!」
「やっぱり・・クビ・・・?」

櫂がアイチの前に差し出しの小さめな箱。
指を軽く押すと、中身がオープンになり、鈍いアイチもそれを見た瞬間に噴火した。

「俺の妻になれ、アイチ」
「つっ・・・・妻!!」

こんなところで、求婚。
真面目な顔した櫂に、アイチの乙女心は揺れ動く。

アイチにも意地があるのか、流れそうになる気持ちを首を左右に振って押さえる。
赤面しつつ、櫂に質問をぶつけた。

「僕のPSYクオリアが目当てなんでしょっ!!」
「違う、そんなもの興味ない。お前こそ、忘れたのか、昔の約束を」

櫂に言われて、昔のことを思い出した。
家族を失った櫂に、家族になってほしいと、知識のない同士の口約束だったが櫂はしっかりと約束を覚えていた。

「期限切れ・・じゃ」
「そんなこと誰が言った。お前は人前で俺が好きだと言っただろう、それは嘘だったのか?」
「違うけど・・・トシキ君は・・・どうな・・」

嬉しい、櫂から告白を飛び越えて求婚されることが。
でもアイチの中の意地が素直に喜ぶ心を邪魔する。

「俺はアイチ以外、妻にする気はない。王としてお前の新しい役職を与える、俺の妻だ」
ぼふっと、アイチの顔が真っ赤になる。
今までにないほど、櫂のストレートすぎる告白に免疫がない。

櫂もいつものツンを忘れているのは、きっとアイチにまた置いて行かれたことに
プッツンしたのだろうが素直すぎるのも恐い。

「「うわっ、最低!!」」
男二人は、櫂の王の権限使いたい放題に、女々しく過去のことを穿り返す櫂に軽蔑の目を向けた。

「今からでも、逃げすの手を貸すか?」
後で面倒だが、アイチも冷静な判断ができていないようで、さっきから口から出る言葉は意味不明な単語ばかり。
櫂の方も冷静にさせてから、改めてプロポーズさせるべきかとナオキは考えていたが。

「もう限界なんじゃねーのか、櫂も。
アイチの奴、ホント綺麗になって・・・本当に誰かに取られてしまいそうだってずっと心配していたし」

他人の心は、言葉にしなければわからない。
アイチは櫂のことをどう考えているのか、尊敬と友愛に近い感情ではないかとずっと不安でいた。

次第に大人へとなっていくアイチに、婚約を解消したことで他国の王や貴族達からの櫂を通じて束のなって
見合いの話が送られてくるが、アイチは全て丁寧に断っていた。

ヴァンガードは男性がやはり、多いのかアイチの周りには男が多い。

その中で恋人ができたっておかしくない、戦闘以外はオロオロしてて
押しに弱くて、戸惑ってばかのアイチには守ってあげる男が必要だと。

それは、三和ではないことは三和自身も理解している。

自然と皆、それは櫂であると、櫂もそう思っていたが、鳥籠から出してあげた鳥は、羽を広げて飛んでいく。

危険なことにも、自ら突っ込んでいく姿に長年ため込んでいたものが爆発したのだと三和は分析。


「勝手にそんな役職・・だったら、僕を倒してからにしてよね!!
光の先導者、アイチ・先導・ユナイテッド・サンクチュアリを!!」

カードを構え、アイチは意志を貫くため、櫂と戦う。
櫂も今回は避けられぬと、ジ・エンドを取り出す。

「わかった、受けてたとう。クァドリ・フォリオ皇国、トシキ・櫂・ドラゴンエンパイヤ皇帝として」

本気の本気で、戦う二人。
以前、AL4連合国で戦って以来の激突、譲れない想いを貫くため、想い合う二人は自ら戦う。











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