クレイアカデミーにも当初、性別を偽って入学したが再び、男装することになろうとは。
宮地が男子のみを入学・入国を許さない国ではないが、離れるのは危険だと男装させたのだ。

「はぁ・・僕、成長していないってことかな」
櫂にお守りをするのに面倒だと言う理由で男のフリをさせられ、迷惑をかけている。
こんなことでは櫂に認められる騎士になどほど遠いと、久しぶりの乳押さえベストを着ているがなんだかキツイ。

「・・あり・・サイズはあってるよね?」
太ったのかと、やはり甘いものだけではなく野菜もエミの言うとおり食べるべきだったと後から後悔して
引っかかっている部分に触れて、それが喜びに変わった。

どうやら胸が大きくなったので、サイズが合わないのだ。
念のため1サイズ上のものも用意してきているのにで

替えの心配はないが胸が大きくなったことを誰にも言えないことが寂しい。

貧乳から、たかが微乳になったぐらいじゃ、ボインで綺麗な女性にいつも囲まれている櫂達の反応は悲しいだろう。

「はぁ・・」
やっぱり、悲しくなってきたと着替えを終え外へ出た。






閉国学園国家、有能なヴァンガード達とヴァンガードを育成するために数百年前に建国。
その歴史はクレイアカデミーよりも古くとか、テツは特別講師として潜入し、あとの全員は生徒として潜入。

外の情報を完全シャットアウトなので、アイチ達の素性を知る者はいないだろう。
仮にいてもそんな有名人が護衛もなしにこんなところにいるはずないだろうと

自分が考えすぎているだろと片づけてくれるはず。

国内には、学校関係者とそれに国民は学校に関する職業に属しており
ほんとうにこの国にいるだけで、生活必需品には困らなさそうだし

国内で生産できないものはわずかだが輸入に頼っているとか。

主にヴァンガードを目指す、王子や貴族達がきており、クレイアカデミーとは違う優雅な雰囲気も感じる学園国家だ。


着替えを終え、更衣室から出るとすでにアイチ以外の全員が着替えを終えていた。
小走りをして合流すると、先頭を教師が歩いていく。

その様子を国の王である『生徒会長』が、紅茶を片手に見下ろしていた。



女子生徒の服に身を包んだアサカ、ミサキに負けないくらいにスタイルと容姿に戦う前からすでに敗北感でいっぱいだ。
なのにアイチよりも優秀で、頭もキレて、唯一レンにいう事は世界の正義!!ぐらいなところが残念なだけだなんて。

「アイチ君と櫂が、同室ということが納得できませんっ!」
レンはアイチと二人っきりと思っていたのに、先導者同士絆を深めようとよからぬことも考えていたのかむくれている。
男装しているとはいえ、年頃の男女が同室・・婚約しているのだから問題はないのが意識しまくっているアイチとは真逆に
櫂は、いつもと変わらず反応なし、部屋が二人部屋と一人部屋しか空いてなく、テツと櫂だけで話し合った結果とか。

「クラスも別々で、アイチ君。お昼は絶対一緒に食べましょうね」
ちゃっかりアイチの手を握り、別れ惜しみつつ櫂とレン、アサカは隣の1-Bへ。

もう一人の教師に連れられて、アイチは1-Aへと行く。
女の子だと、アクアフォースのカードを探しにきたなどバレないようとはフォローしてくれる人は誰もいない。

心の中で「よしっ!」と気合の出るを声を出し
ずっしりと教科書の入ったカバンを持ち、電子黒板に表示されるのは『アイチ・先導』のみ。

フルネームを使うと、バレるかもしれないと三和の知恵だ。

「今日からこのクラスで共に勉強することとなった、アイチ・先導君だ。
皆、来たばかりの彼にいろいろと教えてあげてくれ」

「よっ・・よろしくお願いします!」

大きく、勢いよく頭を下げる。
アイチにクラスメイトから拍手が送られ、一番後ろの席に座った。

転校当初は、やはり皆アイチを珍しそうに見るが「バレた?」と内心ドキドキしているが
誰もアイチが光の先導者だということに気付く者はいないと

ホッとしているドアが突然勢いよく開いて、ビクッと体が跳ねる。

「おい、石田!!また遅刻か」
「寝坊しましたーすいまーーーん」

椅子に座っているので、アイチの角度から堂々と遅刻してきた石田という人間の姿は見えず
明らかなに男の声をしていて、シャツのボタンは第二まで外して、ネクタイも緩めだ。

「さっさと座れ」
近くにいる生徒からは「あれで優秀なヴァンガード候補だなんて信じられない」とひそひそ話が聞こえる。
凄いのに遅刻だなんて、不真面目なのかとその生徒はアイチの後ろの席で顔を見た瞬間、アイチは固まった。


(・・・石田君っ!)


茶色の髪に、目つきの悪い顔・・間違いない、ナオキ・石田・ビギナーだった。
彼と面識のあるアイチは、まさか一日目で最大のピンチを迎えるなど予想していなかったのか
ナオキを見て硬直していると、ナオキもアイチを見て「お前・・」と何かを言いかけるが。

「おい、さっさと席につけ」
教師に言われたので、アイチの後ろの席に座るが授業中ずーーーと、アイチを見ている彼の背中が痛い。
短い休憩時間は物珍しいそうに、同じくクラスの生徒が壁代わりになりアイチに質問をしてきたが
彼らをの退かして質問する気はなく、ただひたすらアイチを見てきて、胃に穴が開きそうだ。

「では、午前の授業は此処までです」
終わりのチャイムが鳴り、全員がランチを食べるために、席を立つ。
ようやくアイチの周りに人がいなくなったのを見計らってナオキがズボンのポケットに手を入れたまま近づいてきた。

「お前、先導か?」
「そっ・・・そうだよ・・・先生も言っていたでしょ・・・」

なるべく平然そうに言いながら、貴重品をポケットに入れて偶然にも廊下を歩くテツを目撃し、ダッシュ。
逃げるように教室を出るがナオキは、追いかけることはなかった。

「どうした?先導」
「・・・・!!・・・・・・あ・・・・・っ・・の・・知っ・・・て・・・」
何か言いたいのはわかるが、声に出ず、ただアイチの教室と指差す。
これほど動揺する事態が起きたのか、正体がバレたのかとテツは考えていると。

「アイチ君、お昼にしましょうvvv
此処ってレストランもたくさんあるみたいですけど、和食にします?それとも洋食にします?」
レンの後ろには、手を組んでいる櫂がメガネをかけている(無駄な変装のため)。
仏教面をしているが、すでに女子からは黄色の声と桃色の想いを寄せられている二人にアイチはさらに

言葉がますます出なくなり、アイチと教室を交互に指差した。




廊下では目立つと、校舎の裏でアイチから詳細を聞いた。

「クァドリ・フォリオ皇国に、あいつがいたことがあると?」
「小さい頃に一度だけ・・・僕のこと、覚えているような感じだったよ」

櫂達に出会う前、いじめられてばかりでいつもボロボロで泣いてばかりの時。
心が痛くて辛かった時に一度だけ話したのがナオキだった。

「先導、奴はお前が光の先導者だと感づいているか?」
冷静にテツは尋ねる、昔の知り合いらしいがアイチのことはトップシークレット扱いとされ
レンを倒した光の先導者は青い髪の目をした綺麗な大人の女性だという噂のみ、確認しているが

突風で吹き飛ばされそうな小柄な体格に、泣きそうな目をしているアイチとは誰も実力を見るまで思うまい。

「わかりません、話をかけられる前に逃げてきたので」
アイチのみ戦線離脱させるのは、暴走しがちなレンを野放しにするも同然。
テツが止められない実力がないわけではないが、そういう役目はアイチの方が適任であるが、本人に自覚はない。

「いい方法がありますよ、アイチ君」
電球に明かりがついたような、いい方法がひらめいたとレンがいつものように笑顔で言ってきた。

「本当ですか!!」
頭の回転の速いレンに、さすがレンさんっと思いついたそのいい方法とは。












「殺せばいいんですよ」

顔に影を落とし、瞳を細め、明るい雰囲気だったのが一気に絶対零度まで温度は下降。





「何を言っているんですかーーーー!!」
どこがいい方法なんですかと全力でツッコむ、レンの後ろにいるアサカがナイフを取り出し。

「アサカはアサシンとして優秀です、完全犯罪など・・簡単に、いざとなれば僕自らが」
「ご安心をレン様。自ら、手を出す必要などございません」
ヴァンガードとして優秀と言っても大したことはないと、怪しく笑うアサカ。
完全に危険人物と化した二人に、ナオキ暗殺を全力で阻止する。

「いけません!!絶対にダメですよ!!櫂君も止めて」
同じ意見のはずの櫂にも、レンを止めてもらおうとしたが、予想を裏切る展開が。



「良い提案だ、−−−・・・で、いつ実行する?」

どうやら櫂も、ナオキ暗殺には賛成のようだ、目がマジ本気である。
こんな時だけ意見が一致しても意味がないのに、「では今夜あたり」とか相談する櫂とレンに。



「だから、だめですーーーー!!」
テツはどうやらアイチは櫂のストッパーでもあったのだと、今後この二人を歯止め役のアイチの苦労に
外見とヴァンガードとしての実力はいうことなしだが、性格に大問題な二強に同情するように溜息を零す。
















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